遊ぶ、つくる、知る… 自分だけの体験で見つけた 「好きの気持ち」が力になる
児童文学作家 廣嶋玲子
こどもたちがワクワクする世界観や物語に登場するキャラクターが魅力の「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズをはじめ、次々に人気シリーズ作品を生み出す人気の児童文学作家・廣嶋玲子さん。
幼少期の遊びや作品づくりの裏話など、児童館で働く皆さんとこどもたちに向けたメッセージをいただきました。
(※本インタビューは情報誌「じどうかん」2026冬号に掲載されたものです)
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遊びに夢中の幼少期
こどもの頃の思い出は、家の中でも外でも、遊ぶことに夢中だったことです。外遊びでは、父と川や海で魚を取ったり、海釣りや素潜りをしたりしました。山でターザンごっこをやったときに、途中でツタが切れちゃったことがあって(笑)。ぬかるみに落ちて無傷だったんですけど、泥の中にズブっとめりこんだ感覚は今でも覚えています。
近くの地区センターだったと思うのですが、小学3年生から6年生くらいにかけて、友だちとバドミントンをしに遊びに行った記憶も残っています。
室内遊びも好きで、ドールハウスや粘土遊び、シールを友だちと交換したり、石や貝がらを箱に入れて集めたり。生き物も好きで、トカゲやカエルをつかまえて飼っていたら逃げちゃって… …。お隣さんから「これお宅のカエルかしら(笑)」って届けてもらったのもいい思い出です。
学校は大きらいで、特に算数の授業が苦手で(笑)。「距離=速さ×時間」という法則があるじゃないですか。一方的に押し付けられている感覚が嫌だったんでしょうね。法則にあてはめて、決められたとおり、というのが苦手でした
「知る」面白さを知った中学時代
中学生になって、面白い授業をする社会科の先生に出会いました。先生は、教科書に書いてあることを言うだけじゃないんです。歴史や社会がそうなったことは「理由がある」そして「こう考えることもできる」と、世の中がなぜそうなったか背景を想像したり、知ることや考えることの面白さを教えてくれました。先生のおかげで物事に興味を持てるようになって、自分で調べたりしはじめました。
気づくと嫌いだった教科はだんだん好きになり、好きになると勉強ははかどるし、成績も一気に上がりました。先生にはとても感謝しています。算数が嫌いだったあの頃の自分には、「法則を覚えるんじゃなくて、なぜそうなるか知ろうとすると、実はとても面白いよ」という言葉をかけてあげたいくらいです。
「好き」はすべての力になる
私には、7歳年下の妹がいるのですが、初めて創作した物語は妹にプレゼントするために書きました。「ビーバーとアヒルがケンカして、身体がバラバラになってしまい、神様がくっつけたらカモノハシになりました」というシンプルなお話(笑)。その後も毎年妹の誕生日に絵とお話をかいて、贈りました。そんなわけで、妹が私の最初の読者です。
大好きな児童文学作家のミヒャエル・エンデさん(代表作に『モモ』『はてしない物語』など)に憧れていたのもあり、ドイツ語(ドイツ文学)を専攻しました。デビューするまでに、あちこちの賞に応募した回数は、100を超えています。
最初は「なぜ認めてもらえないのか」という悔しさから作品の投稿を続けていたんです。でも、だんだん「この作品、こどもが読んで面白い? こどもの頃の自分だったら面白いと思う? いや思わない… …」と気づいたんです。そこから少しずつ工夫を重ねられるようになって、賞をいただいたり、シリーズ化されたりするようになったように思います。
「好きこそものの上手なれ」ってよくいいますよね。その言葉は今でも胸に秘めていて、仕事でも役に立っています。自分の心が動くこと、「好き」は力になるんです。
ただ、だからといって、押し付けになってはいけない。こどもたちが何か感じ取ったり、想像するなら、それはこどもたちの力ですし、その中に「面白い」って思ってくれる人がいるなら、それで充分。そう思って書いています。
やすらげる 止まり木としての児童館
「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」は、実はあるアンソロジー(複数の作家の短編が集められた作品集)がきっかけでした。当時は、児童書ではバッドエンドのお話は少なかったのですが、それを読んだ担当編集者が「これは面白い!」と、ほかのエピソードも読んでくださって。よどみという人気のキャラクターも担当者の「ライバルを出しましょう」のひと声で考えられたんですよ!
アニメ化されて知名度があがったことは光栄でした。大ファンだった声優さん(榊原良子さん)がよどみの役を担当してくれたこともあって、執筆時には、脳内で声が再生されてキャラクターが自然に動くようになりましたし(笑)。
でも、何よりうれしいのは「本はあまり読まなかったけれど、銭天堂をきっかけに、読書の楽しさを初めて知りました」というお手紙やメッセージをいただくことです。これは本当に、作者冥利につきます。
本を読むことって、世界を知ることだと思うのです。そこには、いろんな考え方があり、時には不条理なこともある。けれど、その中で自分の好きなことや好きなものが何かを知ることもできます。そこが読書の魅力であると思うし、すばらしさだと思います。
私は普段、たくさんのこどもたちと直接触れ合う機会が少ないので、児童館で働く皆さんをうらやましく思う一方で、いろんなこどもを見守る姿勢を尊敬しています。どうかこれからも、こどもたちにとっての「やすらげる止まり木」であってほしいです。私も本という世界を通じて、止まり木になれるよう書き続けたいと思います。
今日はありがとうございました!
<プロフィール>
ひろしま れいこ
神奈川県横浜市生まれ。2005年『水妖の森』(岩崎書店)でデビュー。同作品がジュニア冒険小説大賞を受賞。アニメ・実写化された「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズ(偕成社)をはじめ、多数の作品を発表。主なシリーズに「おっちょこ魔女先生」(KADOKAWA)、「ストーリーマスターズ」(講談社)、「秘密に満ちた魔石館」(PHP研究所)、「十年屋」(静山社)、「鬼遊び」(小峰書店)、「妖怪の子預かります」(東京創元社)など。「発掘調査(考古学)」を体験することが最近の夢。
※所属やプロフィールは掲載当時のものです。
