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こどもの居場所に指標はいらない 児童館はこどもの自由を守る最後の砦

青少年教育を専門として大学の教壇に立ちながら、こども家庭庁のこども家庭審議会こどもの居場所部会の委員を務める青山鉄兵さん。こどもの居場所づくりを行う上で欠かせないのは「目的や効果を求め過ぎないこと」と話します。こどもの居場所としての児童館のあるべき姿について青山さんにうかがいました。



サマーキャンプの原体験



小学1年のときに、家の目の前に放課後児童クラブ併設の児童館が新設されました。一人っ子の僕にとって、児童館や学童で過ごした時間は、同世代の仲間と関わる貴重な機会となりました。
小さい頃からサマーキャンプに参加していて、障がいのある子と親を対象としたファミリーキャンプで「大きい声が出ちゃう友だち」と一緒に過ごす経験もしていました。大人になるにしたがって、彼らの置かれている状況や差別を知りましたが、そういったものを認識する前から「一緒にいるのがあたりまえ」という感覚は、いまも心の中に残っています。



親子ともに「失敗できない」時代に



昨今、日本では家庭と学校以外の場所の機能が縮小したと言われています。塾やアミューズメント施設を居場所とする子もいますが、いずれも大人から与えられたもの、もしくはお金で買うもので、こどもが主体的に選んではいませんよね。
そして、残念なことにいまの世の中は居場所にすら成果を求めがちです。大人たちは「将来のために役立つことをさせたい」と考え、講演先でも「居場所のKPI(重要業績評価指標)は?」「得られることは?」という質問を受けることも少なくありません。大学の教員をしていて感じるのは、若いうちの回り道や、役に立つか分からないことへの許容度が低くなっていることです。受験、就活、婚活を経て終活に至るまで常に将来の準備に充てられ、役に立つかによって物事の選択が図られがちな感覚は、現代を象徴するものではないでしょうか。



僕は、「そうは言っても難しい」と頭を抱える児童館の職員さんたちにはKPIとの「真剣すぎない付き合い」をおすすめしています。来館者数の推移や年代の変化など、数字だけで児童館の本質が計れないことをきちんと確認した上で、基礎的な数値も参考にしつつ、最後は自分たちの価値観と専門性を信じてやっていくしかありません。「いい体験になった」とか「支援につながった」といった成果はあくまで「結果として」ある方がいい。体験や支援を目的にすると、かえって不健全な方向へ進みかねません。



▲小学生から現在も関わり続けているキャンプ



児童館は最前線であり最後の砦



児童館は、こどもが自ら「行くかどうか」から選択できる貴重な場です。訪れた場所で、自由に過ごし方を決められる、そんな場所はそうはありません。ただ意味もなく遊べることが守られていることは、とても重要だと思います。児童館に来ないこどもも含めて、行くかどうかを選べる環境があり、居心地のいい場所が地域にあること自体がかけがえのない価値です。



居場所には「ターゲット型」と「ユニバーサル型」があります。貧困・虐待などの課題にアプローチできる場を「ターゲット型」、課題解決をめざさず誰にでも開かれた場を「ユニバーサル型」といい、前者は不登校や障害のあるこどもの居場所が、後者は児童館や公民館が当てはまります。
そのように区分すると、しんどい子はターゲット型へ、元気ならユニバーサル型へ、と思われがちですが、児童館で大切にしたいのは「元気な子もいるけど、元気じゃない子もいるのが当たり前」という、どちらも内包する場所であることです。



ヤングケアラーを例に挙げると、そもそも自分がヤングケアラーだという自覚がない子も多いですし、仮に自覚していたとしても「支援臭」のあるところに思春期の子はなかなか寄り付きません。
「結局、児童相談所よりも児童館の方が相談しやすいんだよね」という声を聞くこともあります。その言葉は、こどもたちにとって児童館が専門機関とは違う特別な存在として捉えられている証拠です。ユニバーサル型だからこそ拾えるニーズがたくさんあり、すべてのこどもに開かれている児童館は、まさに最前線であると同時に最後の砦なのだと思います。



こどもの声が自然に反映される存在に



こどもの意見を尊重することは、自分たちの場を自分たちで決める「自治」の経験につながります。
ヨーロッパのユースセンターなどへ行くと、こどもたちが自分で決定することへのこだわりを強く感じます。ベルギーのユースセンターでは、職員が「新しいスタッフを採用しようと思うんだけど、この人でいいかな」とこどもたちに投票してもらって決めていました。

「自治」には必ずしも全員が参加する必要はありませんが、こどもたちの声を反映する仕組みがあることで、こどもが構成員として認められるという実感を得られます。



また、こどもたちとかかわる児童館職員の皆さんには、まず自分たちが楽しくあってほしいです。指導や支援を行い、遊びを提供する側、という以前に、一緒に遊んで楽しむことを大切にしてほしい。
レクリエーションが上手な職員や、楽器や剣玉などの得意技がある職員が人気になりがちですが、みんながそこをめざさなくていい。目立つ得意技を持っていることよりもこどものそばに、ほどよい距離感でいられることの方がよっぽど大事ですし、こどもたちの中に自然にいられるからこそ出会える声やニーズがあるはずです。



居場所とは空気のようなもので、なくなって初めて大切さに気づくものです。こどもの居場所としての児童館の価値を、普段から大切にし続けてほしいと思います。 



<プロフィール>


青山 鉄兵


1980年生まれ。東京都出身。専門は社会教育・青少年教育・ユースワークなどで、こども・若者の体験活動や居場所の研究・実践・政策に関わる。
文部科学省生涯学習調査官、国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター客員研究員、中央教育審議会社会教育のあり方に関する特別部会委員、こども家庭審議会こどもの居場所部会委員、東京YMCA長期キャンプ「野尻学荘」副荘長などを兼務。
特技は日本手話。2025年、とあるオンライン会議で、小学生時代の放課後児童クラブの先生と約40年ぶりに再会を果たす。

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