*

*

こどものやりたい、こう思う、を肯定し手をさしのべられる、カッコイイ大人に

行政や企業と協力しながら、社会や環境問題に取り組む若者による組織「国際NPO Earth Guardians」の日本支部の代表を務める川﨑レナさん。現在はアメリカの大学で学びながら、こどもや若者の言葉を大人に届けるための活動・支援を行っています。国内外での活動のきっかけや未来への想いをお話いただきました。


(※本インタビューは情報誌「じどうかん」2025夏号に掲載されています)



誰かを笑顔にしたい


母に幼少期の話を聞いたところ、小さなころから好奇心が旺盛で、紙とテープがあれば、切って貼って何でも作っていたので、両親から「テープ星人」と呼ばれていたそうです(笑)。児童館など無料で利用できるところは何度も連れていってもらい、歩くよりも先に話しはじめたそうで、好きな絵本を手に、自分で物語を作って(文字は読めない)弟に読み聞かせをしたり、物心つく前からおしゃべりが好きだったみたいです。


両親は、海外でも自分の意見を話せる人間になってほしいと、インターナショナルスクールを選択したそうです。私が恵まれていたのは、自分の考えや行動を、肯定してくれる大人(先生)、話を聞いてくれる大人がいたことです。その積み重ねがあったから、私は誰かを笑顔にすることを想像し、他者のために行動するようになったのだと思います。



▲自分の顔もキャンバスにしていたこども時代


活動の視点は海外へ


中学時代は生徒会長になり、イベントを考え、実行していましたが、新型コロナの流行により、その機会はなくなりました。そんな時代背景もあって、いまどこかで苦しんでいる人がいるかもしれないのに、なにもできない自分をもどかしく思うようになりました。


その思いを先生に相談したところ、アメリカのNGOが学生のショート動画を募集していること教えてもらい、さっそく動画を撮って応募しました。残念ながら、賞は取れませんでしたが、これを機に国際NPO アースガーディアンズ(以下EG)という団体を初めて知ることができました。EGは森林再生や海洋保護など、環境や社会問題への解決を目的に活動する組織となります。ここでの活動を通じて行政や政治などについて、同世代の人たちが大人に対して物怖じせず提言する姿を見て、衝撃を受けました。そこで、私とほとんど変わらない年齢の人たちができるならば私にもできるはずと、意を決して日本支部を立ち上げたました。


また、世の中の仕組みを考えるには、政治家の人に話を聞いたら面白いかもしれないと考え「政治家と話してみようの会」がはじまりました。設立当初は同じ学校の生徒だけで構成されていましたが、2025年3月現在、日本全国の小学生から大学生まで約30人が活動しています。高校生が視察して提言したり、地元のこどもたちだけで屋台を作ってお祭りをしたり、リーダーシップ研修を開催したり、さまざまなプロジェクトや研究会があります。案件ごとにオンラインMTGを開いて、メンバー同士で意見交換し、活動を深めています。



▲北海道安平町での保育園視察にて(2024年8月)


カッコイイ大人になるために


高校1年生のときに、バイオテクノロジー企業である株式会社ユーグレナの2代目こども未来CFOを務め、社会問題解決に挑戦し続けていくためのアイデアを考えるプロジェクトに複数参加しました。


ある東京都のプロジェクトで意見を求められたことがあるのですが「大学生世代だけでなく、小学生にも話を聞いてはどうか」と提言したところ、プロジェクトでアート作品が使われました。たった数か月後にかたちになっていて、そのスピード感に驚きました。


こどもの意見集約の提言を求められ採択はされたものの、採用されなかったこともあります。街なかにポストを設置することを提案したのですが、紙で集める方法にしたことで集計に手間がかかることがわかりました。事務処理を考えていなかったんです。ゲームやアプリのように二次元コードから意見を送れるかたちに変更したところ、20代の回答率が大幅に上がったそうです。行政は、いろいろな人たちが一緒に考えて課題解決を目指していく場なのだなと改めて認識しました。そして「行政」や「政治」という言葉に身構えることなく、怖くないことをもっと知ってほしいと思いました。


国際子ども平和賞受賞後は、同年代の人たちからたくさん連絡をいただきました。助成金や寄附金をいただけるようになり、活動する若者の交通費にあてたり、アイデアを応援できるようになるなど、活動の幅の広がりを実感しています。今後、日本支部の活動を継続し、さらに盛り上げる必要性をも感じます。


アメリカに来てからは、将来を考えるようになり、今は弁護士をめざしています。


なぜ弁護士になりたいのか、一言で言うならば(いうのは難しいのですが)、私が憧れている「こども食堂を運営しているおばちゃん」のような人間になりたいと思っています。若いお母さんたちが赤ちゃんを預けてゆっくりしたり、質問や悩みがあれば、ちゃんと聞いてくれたり。そうしたことをおばちゃんは、自然にしているんです。勉強したら誰でもできるようになる、というわけではない、きっと何かがあるんですよね。私はそういう場所で、弁護士として専門的な相談もできて、居場所や仕組みも作れたらいいな、と思っています。


こどもの頃、「そうだね、面白いね」と言ってくれた大人たちには、今も感謝を伝えきれていません。こどもの居場所である児童館のみなさんの仕事は、私にとってのおばちゃんと同じ立ち位置で憧れの仕事に近く、どれだけ学んでも簡単になれるものではないと思います。皆さんがそばにいることで、救われるこどもがいます。いつもありがとうございます。私もカッコイイ大人になれるように、がんばります!


<プロフィール>
かわさき れな
2005年生まれ。大阪府豊中市出身。 関西学院大阪インターナショナルスクール卒業。2020年に国際NPO Earth Guardiansの日本支部を創設し、若者が政治参加できる仕組みを作ったことで注目される。同年10月から2022年6月まで株式会社ユーグレナの2代目 CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)を務めた。2022年11月「第18回 国際子ども平和賞」を日本人として初めて受賞。2023年秋から米国イェール大学に全額奨学金で留学。学業と活動の両立に奮闘中。

記事内を検索

*

キーワードから探す