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児童館OGが語る、人生で大切な「好き」が見つかった

現在、舞台を中心に活動されている俳優の荒井葉月さん。荒井さんは、小学校時代に児童館の演劇クラブ「児童劇団」に習い事として通い、その活動をきっかけに児童館を利用し始めました。現在になって振り返れば、学校や家庭ではない居場所がもたらす価値を感じているそうです。人生の基盤ともなった、児童館でのかけがえのない経験をうかがいました。



演劇をきっかけに児童館へ、「やりたい」を尊重してくれた特別な居場所


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▲児童劇団の発表会では、こどもたちと職員が本気で準備に取り組んだ



荒井さんが演劇を始めたのは、小学校3年生の頃から。学校で配布された児童館からのおたよりに載っていた児童劇団に興味を持って、友だちと一緒に通い始めました。児童劇団は2030人ほどが所属し、年に2回、1時間ほどの劇の発表会を都内の文化施設で行っていました。こどもたちへの演技指導や演出の助手的な役割を担っていたのが、児童館の館長や職員でした。


練習場所は、主に文化施設の近隣の児童館で、こどもたちの放課後の居場所にもなっていました。当時、荒井さんにとって児童館のイメージは「学童クラブ」や「共働きのこどもたちの場所」であり、利用する機会もありませんでした。しかし、演劇を始めてからは「自由に過ごせる、こどもたちの場所」だと知ります。


特に発表会前は、夜8時くらいまで稽古に励むこともあり、みんなでお弁当やお菓子を食べることも大きな楽しみでした。荒井さんは「家でも学校ではない場所で過ごす、本当に特別な時間だった」と振り返ります。



年齢や学校を超えた新しいコミュニティができ、充実した時間を過ごせた


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▲学年や学校を問わず、友だちがたくさんできた荒井さん(写真中央)



演劇をきっかけとして、荒井さんは児童館で新しいコミュニティができたと話します。小学3年生から6年生まで学年や学校を問わず、みんなで児童館に集合して放課後や休日を過ごすようになりました。 


荒井さんは小学校の頃、「遊ぶ場所が公園だけでは不十分でした。そもそも屋外ですし、ずっと過ごすには限界がありました」と語ります。一方、児童館は雨の日も夏休み中も、大人に見守られつつ自由に過ごすことができる場所でした。


児童館では、公園にはない遊具を使ったり、漫画を読んだり、おしゃべりをしたり。特に、みんなで同じ漫画を読んで感想をシェアし合うなど、共通の話題で盛り上がりました。「みんなで同じものにハマれる機会があり、健全に時間をつぶすことができた場所だった」ことが印象的だったと話します。


 


親でも先生でもない、何かあった時に頼れる「第3の大人」がいる


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演劇にハマっていた荒井さん



そんなこどもたちのコミュニティに寄り添い見守っていたのは、当時の児童館館長や職員です。荒井さんにとって、先生や親ほどの上下関係があったわけではない、タメ口がきける“特別な大人”でした。


演劇では、館長自らオリジナルで脚本を制作することもありました。当時一緒に携わっていた職員によると、演劇を創り上げる過程ではすべてこどもたちの意見を尊重しながら、脚本を作ったり配役を決めたりした、と言います。


こどもたちも自分のやりたい気持ちが反映されると、絶対練習にも来るようになり自ら一生懸命取り組むようになっていました。衣装や音響、照明の調整まで、こどもたちと職員が共に本気で取り組んだからこそ、発表を終えた後は素晴らしい達成感を得ることができました。


一方、演劇の中で希望した配役になれず、こどもたち同士で悩むことも。そんな時、職員はこどもたちが家に“モヤモヤ”を持ち帰らないように、“小さなガマン”が溜まらないように、それぞれの想いに配慮しながらサポートしてくれていたのです。


荒井さんが友だちとの関係に悩んだ時も、職員がいつもと微妙にちがう荒井さんの表情を見て気づいてくれ、自ら相談しに行かなくても解決してくれた経験があったと言います。「何かあった際に頼れる第3の大人」として、荒井さんも安心感を持って過ごすことができました。



単なる遊び場ではなく、人や情報が集まる「出逢いの場所」


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学生時代も児童館を訪問し、演劇の楽しさを伝える荒井さん (写真右)



荒井さんは、その後中学校や高校でも演劇部に所属し、時おり児童館に顔を出していました。


「児童館をきっかけに、演劇という好きなものに出逢えた。それが大学の専攻や進路、そして今の職業にもつながりました。この経験を、いまのこどもたちにも知ってほしいと思います」


荒井さんにとって児童館は、単なる遊び場ではなく「出逢いの場所」でした。「勉強以外で好きなものを見つけられる機会があり、自分で何かやりたいことにチャレンジでき、さまざまな人や情報が集まり一気に視野が広がる場所でした」と児童館の存在を語ってくれました。


荒井さんのように、自ら探さなくても、児童館の活動を通じて興味を広げていくことができる場所は、インターネットが普及した現代のこどもたちにとっても貴重な存在かもしれません。また演劇の活動を通じ、「みんなで一つのものをつくりあげる力」「困難に立ち向かう力」「自分を支えてくれるコミュニティ」は、舞台俳優として歩む荒井さんの基盤となっています。 


地域の児童館では、演劇の他にもさまざまなクラブ活動やイベントを実施しています。ぜひお住まいの地域の児童館に足を運んでみてください。児童館の場所は、「児童館を探す」から検索いただけます。


 


<プロフィール>


荒井 葉月


199894日生まれ。スペースクラフト・エージェンシー所属。中央大学卒。舞台・映像作品を中心に活動中。出演作にTAFプロデュース「幕末疾風伝〜MIBURO〜」、すゞひ企画 演劇×体験型ミステリー「雪降る街と2人目の証人」などがある。近年はイマーシブ演劇にも出演。


各種SNSで情報発信中。X:@hazuki_A_ Instagram:@hazuki_a_

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