*

*

演じ手としての根っこは、 遊びで培った“空想するちから”

「たんけんぼくのまち」、「いないいないばあっ!」など、世代をわたって愛されてきたチョーさん。声優としてもさまざまな作品に携わるチョーさんに、それぞれの仕事への想いや、子どもたちへの接し方についてうかがいました。
(※本インタビューは情報誌「じどうかん」2023春号に掲載されています)


 


空想して楽しんだ少年時代


子どもの頃は友だちと相撲やかくれんぼ、探検や秘密基地づくりをして遊びました。けど、一番好きだったのは空想遊び。空想の世界で主人公になり、探検したり冒険したり、戦ったり、ひとりで楽しんでいたことを覚えています。


今思うと、当時故郷はド田舎でね。テレビを見て、都会の子どもたちはカッコいいなぁと憧れていました。東京のいとこの家へ遊びに行ったとき初めて児童館を見たんです。「こんなところがあるなんて、東京はやっぱすげえ!」と思いました(笑)。


一番記憶に残っている苦い思い出は、ある夏の日のことです。ひどい台風がきていて、集団下校することになったんです。田んぼが一面の湖みたいになっていました。そのとき、スッと肌が止まって、真上に青空がぼーんと見えたんです。「うわー」ってなって、そのまま3、4人で遊びだしちゃって。夕方になり、そろそろ帰ろうかと歩いていたら、親たちがやって来るのが見えました。どうしたんだろうと思っていると、ひとりのお父さんが駆け寄ってビンタして「心配したんだぞ!」と。親たちはずっと僕らを探し回っていたらしいんです。それを見て「あ、怒られてるんだ」ってようやく気づきました。


人がぶれたのを見たのは初めてだったもんだから、僕もぽかーんとしちゃって。うちのおふくろは、かえって怒れなくなっちゃったらしくて。家に帰ってから「本当に心配したんだよ」って。水の事故がいかに怖いか、大人になってわかりました。


それと、運動神経が鈍かったんで、実は運動も体育の授業も好きじゃなかったです。鉄棒が全然できなくて、親父が自宅に鉄棒をつくってくれたんですけど、それでも全然できませんでした(笑)体育への意識を、なんかね、詩に書いたことがあるんです。小学校の1~2年の頃「また通信簿2かな」「鉄棒がどうしてもできない」と書いたものが、新聞の紙面に載ったことがありまして。親戚も笑っていました(笑)



下積み時代はアルバイトで児童劇を全国の小学校で公演


もらった役でどう遊ぶか 俳優・声優それぞれの仕事


「たんけんぼくのまち」は、小学3年生社会科向けの番組で20本放送がありました。自転車に乗って地域と社会のしくみを調べ、手書きのイラスト入りの地図(たんけん地図)にまとめ、発表するスタイルでした。8年の放送で、長野、茨城、福島、静岡、神奈川と6つの地域のいろんな場所を訪問したんです。どこも思い出深いんですが、長野県諏訪は初めてのロケ地ということもあって、印象に残っていますね。その年の訪湖は全面結氷し、小さな氷の山脈が連なる自然現象「御神渡り」ができた年で、圧倒されたと同時に、すごく寒かったのを覚えています。


番組で恒例になっていた「たんけん地図」は今でも書いてよと言われることもあるんですけど、行って体験しないと書けないんですよね。「自分はこう思った」「こういうふうに感じた」「ここが面白かった」をクローズアップして書く地図なので、もし皆さんも児童館で取り組んでみたら、面白いたんけん地図ができるんじゃないかな。


声優の仕事は、演じること自体が面白いです。アニメーションは主に平面なので、表現方法が実写と違ってしゃべり方を少し誇張したりアニメ独特な演じ方になる場合が多いんです。もちろん中には「誇張せずリアルにつくってください」っていう作品もあるんですけど、誇張することで、感情やテンポが生まれます。そんな話し方しないだろうっていう口調でもオッケーだし、想像してつくれるんですよね。それが楽しい。子どもの頃に楽しんだ空想遊びの延長な気がします。

一番楽しいのは、新しいキャラクターをもらったとき。台本を読みながら、どんなキャラクターなんだろう、どんなシーンでどう遊ぼうと考えるときが一番ワクワクします。正直なところ、生身の役者としての仕事は「自分の薄っぺらさを見透かされるかも」という怖さがあります。 スーツアクターや声の仕事は、生身を見せず、自由に表現できて好きに遊んでる感覚なので、長く続けられているのかもしれません。


コロナでは声の仕事の収録方法もガラッと変わりました。 みんなで集まって一気に録音していたのが、今は1人か2人、多い時でも4人程で録っています。今後はこの方法が定着していく気がしています。 声優同士のつながりが希薄になってしまいさみしいですが、前を向いて頑張っていくつもりです。


自分だって子ども 僕流のかかわり方


僕が子どもと接するときに気をつけているのは、なるべく相手を子どもだと思わず、気を使いすぎないようにすることです。僕自身、能天気で気まぐれなところがあるから、うるさいと思えばうるさいなぁと言うし、遊びたくなったら一緒に遊ぶ。子どもの気分や機嫌にそこまで気を使う必要はないって思います。


そして、実は子どもと接するのがそれほど得意な方ではないのです。自分が子どもだから特に意識しないだけで。児童館で働く皆さんは、子どもが好きとはいえ、大変だと思います。よく堪忍袋の尾が切れずにいられると頭が下がります。僕に何かお手伝いできることがあれば言ってください!


元気に生きていられたらそれで幸せ。僕の望みはそれだけです。皆さん、コロナ禍で神経をとがらせないとやっていけないこともあると思いますが、どうか気を楽に過ごしてほしいです。子どもに負けないくらい、自由気ままな部分も大切に、楽しく生きて行けたらいいですね。


<プロフィール>
ちょー
1957年12月15日生まれ 埼玉県鴻巣市出身。3人きょうだいの長男。 NHK教育テレビ「たんけんぼくのまち」(1984-1992年)で主役“チョーさん”を演じ、全国の小学生の人気者となる。1996年からは幼児向け教養番組「いないいないばあっ!」のワンワン役として、そのまますべてを演じる。他に、「ロード・オブ・ザ・ リング」ゴラム役、アニメ「犬夜叉」邪見役、「ONE PIECE」ブルック役など、声優として幅広くも活躍する。元気の源は、毎日のジョギングと米ぬか。愛猫の名前は、どんぐりまなこの「どん」。

記事内を検索

*

キーワードから探す