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すばる児童館のアウトリーチ

三重県津市 すばる児童館
副館長 堀本 浩史

1.なぜ児童館でアウトリーチなのか?その背景と考察

 地域の方々と児童館について話をすることがあります。児童館についての詳細を聞かれる中で「地域の皆さんが児童館についてよく知らない」ことに気づきました。まずは、自分たちが外に出て児童館をアピールし、地域の方々にもっと詳しく知っていただく必要があると考えました。

 児童館は、子どもやその保護者が主役の児童福祉施設だと思います。しかし、すばる児童館は、これまでの活動の中で、子どもたちの声や保護者の声をきちんと聴いてこなかったことに気づきました。アンケートや子ども会議、児童館夏祭りや巡回児童劇の子ども実行委員会など子どもが少しでも自主的に参加し、子どもが意見を言える企画や活動を増やす必要があると思いました。
 すばる児童館は、津市の北部に位置する児童館です。津市総合計画(市政の方針の基本計画)や次世代育成支援行動計画、子ども・子育て支援新制度等での児童館が置かれている立場、どんな役割を果たせばよいのかを知り、市政の中で、本当に必要な子ども支援について考えておく必要があると思いました。
 児童館は「遊び」を通じた子どもたちの健全育成を行っています。しかし、これまで、遊びの有用性や児童館の法的な根拠など正しく理解できていないことと、地域の方々に説明できていないと考えました。

2.児童館と地域との関係性を改善し、児童館を知ってもらう!アウトリーチが必要だ!

◎一身田寺内町祭り実行委員会(地域の商工会が中心に行う会議)に15年間継続参加。
 当日の祭りでは、地域団体等による舞台発表や特産物のバザー、中学生手作り品の販売などにぎやかに行われる中、すばる児童館は、高田本山という大きなお寺の境内で、竹馬、三角馬、けん玉、こま、竹とんぼの紹介と体験、児童館活動の写真展示、児童館便りの配布等を行っています。竹馬やこまなど祖父母の世代の方が積極的に子どもたちに教えてくださる場面があり、自然な世代間交流や遊びの伝承の機会を提供できていると感じています。また、児童館に子どもの頃、遊びに来てくれていた人が大人になり、その子どもを連れ来場してもらえるようになっています。児童館を通じて、様々な人々がつながっている様子を知ることができ、児童館職員としても本当にうれしい機会です。
 このような取り組みにより、実行委員会の方々に子どもの地域での安全確保や児童館予算等のことも含めて相談できるようになりました。地域との信頼関係を築くことのできる大きなきっかけと考えます。また、児童館の存在を地域の代表の方々に知ってもらうことができました。子どもを支援するということは、一時的なものではなく、各世代を通じて継続することが地域の力になることがわかりました。実行委員会に参加する中で、地域商工会の店舗で買い物をする人が減少傾向にあるなど地域の課題にも触れる機会がありました。地域の課題を児童館も一緒に考えることも大切だと思います。

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平成25年度一身田寺内町祭りへ参加(寺内町祭り実行委員会主催)
日時:平成25年11月17日 場所:高田本山境内

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平成26年度歴史丸ごと体験塾(津市教育委員会主催):昔遊び体験・交流コーナーを児童館職員が担当
日時:平成26年8月6日 場所:高田本山宗務院

◎保護者の要望から生まれた「出前児童館」
 児童館活動を少しずつ広げていく中で、地元の小学校の保護者から、PTAの学級活動や学年活動、子ども会の活動が新鮮味がなく、毎年同じ内容をこなしている状態で「何かいい遊びや工作を教えてほしい!」との声が聞こえるようになりました。初めは、PTA等の皆さんに「遊び」をうまく伝えることができるのかと不安がありましたが、「今こそ、児童館の出番ではないか」との気持ちで協力することに決めました。支援する内容は、主に子どもや親子を対象にした室内レクリエーションや工作です。詳しい活動内容については、年齢や人数に合わせて依頼者と相談の上、決めることにしています。初年度は2回程度の依頼でしたが、少しずつ「児童館職員にPTAや子ども会の活動に来てもらったらよかった」という声が広がり、近隣の小学校だけでなく、他の地区の小学校や子ども会、歴史まるごと体験塾(津市教育委員会主催)等から依頼が来るようになり、現在は、1年間に10回程度の依頼を受けるようになりました。
 このことにより、児童館活動をたくさんの方々に知ってもらい、様々な遊びを通じて親子の触れ合いができました。また、児童館で待っているだけでは直接触れ合うことのない子どもたちと接するきっかけとなり、その状況を把握することができました。さらに、各学校の先生や保護者等と今まで以上に親密な関係を築くことができたと思っています。
 課題としては、保護者等が段々児童館職員に頼るようになり、「児童館にすべてお任せ」となってしまう傾向があることです。大事なのは、活動の準備段階で保護者等の参加を促し、保護者等と児童館とが一緒に創っていく姿勢や子どもや保護者等の声をどう生かすのかだと考えています。

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出前児童館(つつじヶ丘子ども会)
日時:平成26年5月31日 場所:つつじヶ丘集会所

○子どもに関わる会議に参加
●津市子どもの権利条例づくり推進市民委員会
●津市子ども支援ネットワーク
●津市子ども・子育て会議
●つながりひろば(津市子育てひろば関係者交流会)など

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出前児童館(津市立一身田小学校1年3組PTA学級活動)
日時:平成26年6月27日 場所:一身田小学校体育館

 国の政策(子ども・子育て支援新制度等)に見られるように、放課後児童クラブや保育園、幼稚園、認定こども園のことは取り上げられるけれども、児童館のことが直接的な話題とならないことに危機感を持っています。児童館のことが議題にならないにしても、児童館職員が子どもに関わる会議等に積極的に参加して、児童館活動(遊び)の重要性や子どもの声を少しでも話せるようにしていきたいと考えています。また、会議の内容が利用者(子ども・保護者等)にとってどうなのか?という本質的なことが大切なのに、量(数)をどうするのかということに集中してしまう傾向があると思います。児童館の職員だからこそ話せる「子どもの声」や「地域の声」を代弁する必要があります。
 子どもに関わる会議に参加することにより、様々な団体や個人と知り合うことができ「顔の見えるネットワークづくり」のきっかけとなっていると思います。また、0歳から18歳未満の子どもたちを継続した支援ができるのは児童館だけで、途切れのない子ども支援のつなぎ役として活躍できるのではないかと思います。さらに、児童館のことを説明できる機会を通じて、主に行政の方々に児童館活動を知ってもらい、予算の確保につながっていると考えています。

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出前児童館(津市立北立誠小学校1年生PTA)
日時:平成26年7月8日 場所:北立誠小学校体育館

3.最後に、これから子どもが輝くために「遊びの理念を掴む」

 地域に出て、改めて感じるのは、「児童館ガイドライン」に沿った、堅実な児童館活動の推進であると思います。その中でも、重要なのは、当事者である子どもの声を聴き、児童館活動に活かすことができるかということ。遊び本来の理念を掴み、子どもと一緒に共感するということです。すばる児童館では、2年前から「こども会議」を開催し、キャンプや宿泊旅行・夏祭りなどこどもの声ができるだけ反映できるものにしていきたいことと児童館行事への参加人数の増加を促したいと思っています。また、子どもたちに児童館アンケートを実施して必要とされる児童館活動を進めていきたいと思います。

?地域にどのような子ども支援が必要なのかを把握する。
 地域には、学校での成績、クラブ活動、家庭環境や子ども自身や保護者の障がいなどの問題により、通常の生活が送りにくい子どもがいます。特に児童館には家庭や学校での居場所のない子どもが来館することが多くあり、その受け入れに苦慮するケースもあります。児童館が子どもに何ができるのかを考えると1つの児童館でできることは小さく、他の団体、学校などとの子ども支援ネットワークの構築が必要になります。アウトリーチはその第一歩です。

注:
アウトリーチとは、公的機関や公共的文化施設等が行う地域サービスのことを言うが、今回は、児童館が行う館外活動で地域の子どもの力になること全般を指してアウトリーチとさせていただいた。

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施設基本情報

施設名  すばる児童館
施設種別  小型児童館 ・ 放課後児童クラブ(保育園、母子生活支援施設併設)
運営形態  民設民営
運営団体名  社会福祉法人 三重清暉会
所在地  三重県津市一身田平野360-1
創設年  平成2年
来館児童数  1日平均 約40名(平日)
登録児童数  1年生-3年生 合計45名
スタッフ数  通常 4名体制

 高田本山寺内町近くにあり、田園と住宅に囲まれたのどかな地域に建つ児童館です。毎年、開かれる「寺内町祭り」には事前の実行委員会から参加しています。また、乳幼児親子対象の「あそびひろば」、児童福祉週間啓発行事として「こどもフェスティバル」、野外活動として、「キャンプ」「冒険ツアー」「遠足」など、食育事業として「料理教室」「乳幼児ヘルシークッキング」などに取り組んでいます。さらに、他の児童館との交流事業や津市教育委員会が主催する「歴史まるごと体験塾」にも参加・協力しています。

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