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児童館ができて地域が変わった!

新潟県燕市 小中川児童館
館長 大橋 美樹

1.児童クラブ時代

 小中川児童館の前身である小中川児童クラブは、平成11年9月1日に「小中川小学校区の児童の放課後を有意義なものにするため、昼間留守宅家庭で保育に欠ける児童を預かる」という設立趣旨により開設されました。小中川小学校のある地域は、田んぼが広がる田園地帯で、地場産業の金属加工の自営業も盛んである一方、県営住宅、市営住宅、労働者雇用促進住宅が学区内に5個所もありました。そして、団地の子と農家の子は放課後あまり接点がない、という状況でした。大家族で農業と家内工業を営む兼業農家と、共働きもしくは一人親家庭で放課後家に誰もいない団地生活者とでは、生活形態からして違っていたのです。

 小中川児童クラブは、「昼間留守宅家庭」という預かり条件から団地の子が多く在籍することになりました。また、市営住宅に優先入居ができることから、一人親家庭の率が高く、さらに、県営住宅がDV等で他市町村から来た児童の受け皿になっていることもあり、「虐待事例が絶えない」という問題点がありました。軽度のネグレクトを疑いつつも、生きるための仕事で擦り切れている保護者に、子どもに目を向けて貰うには、体力、気力、経済力共に限界で無理だと感じることが多く、何とかしてあげたくても職員と保護者だけの力ではどうにもできない状況でした。

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小中川児童館

2.児童館ができる!

 「地域全体で子どもを見守ろう」という機運が高まり、平成21年3月1日に小中川児童館が開設されました。私たち職員は、これで、?児童クラブでない子とも関われる、?卒会生とずっと関わっていける、?地域に働きかけができると、嬉しく思いました。この3つができないので、児童クラブが抱える問題が解決できないのだと感じていたからです。
 しかし、実際に児童館の運営が始まっても、児童クラブの枠から、簡単には抜け出せず、壁を感じました。イベント以外に自由来館児が来ない、地域と関わるきっかけ作りが上手くできない、何より職員が利用料をいただいて預かっている児童クラブ在籍者と自由来館児への対応の違いがわからない、等々、前よりも悩み多き日々になりました。

3.どんどこプロジェクトが来た!

 そんな中、ある日突然、児童育成推進財団から電話がかかって来ました。「どんどこプロジェクトに参加しませんか」というお誘いでした。子どものための児童館とNPOの協働事業という説明に、何だか良くわからないながらも、現状を打破できるような匂いを感じて引き受けました。
 どんどこプロジェクトは展開の速い活動で、本当に「どんどこ、どんどこ」進みました。3月に児童館ができたばかりだというのに、6月には、第1回のどんどこプロジェクト活動を行っています。初回は無我夢中で過ぎたものの、第2回の夏祭りの時、意見の対立がありました。「地域の参加」という言葉に解釈の違いがあったのです。児童クラブは利用料をいただいているから、それ以外の地域の子や卒会生とはあまり関われず、職員は地域の「子」が来てくれただけで大満足していました。でも、財団からプロジェクトの進捗状況を見に来てくださった方に「地域が関わっていない」と指摘されたのです。あんなに地域の「子」が来てくれたのに、と反発する職員との間で板挟みになり、このプロジェクトを今後もやっていく力は今の私には無いと感じました。保護者以外の地域の大人に参加してもらう企画を考えることが、できなかったのです。
 膠着状態を変えることができたのは、協働相手であるNPOの発想を取り入れたからです。それは、「好きなこと、やりたいことをやればいいじゃない!」という発想でした。NPOの方々は、最初は他に仕事を持っていた人もいて、趣味を仕事にできるくらい専門性を高めた結果NPOを設立し、それを仕事にしていました。やりたいことを仕事にしている人が持つ屈託のなさがありました。同じようにやれば地域の大人にアピールできるかもしれないと感じました。そして、好きなこと、やりたいことを考える中、自分たちの専門って何だろう、と考える契機になりました。また、地域にも一芸がある人がいるかもしれない、という発想も生まれました。私たちは、まず、自分が好きなことを持ち、そしてそれを一緒にできる人を探し始めたのです。

4.地域との交流のきっかけ

 そう考え始めると、小中川児童館職員は芸達者であることに気付きました。ダンス・折り紙・食育・科学遊び・英語・園芸・ジャグリング・和太鼓・陶芸・合唱等々、バラエティ豊かな才能が集まっていました。なので、小学校の文化祭の「地域交流」や、子育て支援センターの食育や親子体操に講師として職員を派遣しました。公民館の文化祭で指導員補佐やファミリーサポートの講師もやっています。そういう形でまず職員が地域に出ました。

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まちあるきを地域の人と!

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地域の人と地図を作成する / 個々の指導員を地域に知ってもらおう

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中国人おかあさんによる餃子作り体験 / 個中学陸上部による「逃走中」

 一方、「誰もが何かを持っている」という視点から、地域の人を児童館に呼び込むことを始めました。中国派遣の高校生を異文化理解講師に呼ぶ、中学陸上部をハンターにして「逃走中」を実施する、中国人おかあさんの餃子作り教室を開く、などが実際に行った企画です。教えれば教えてもらえるのです。そうやって得た、分かち合う時間が宝物です。

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中国派遣の高校生を異文化理解講師に

5.地域での子どもの見守り

 児童クラブ時代にどうしても解決できなかった問題に対する解決策が見つかりました。血が繋がった親子でなくても周囲の人間関係に支えられて子どもは育っていくのです。大事な孫の大事な友だちはやっぱり大事、という認識を地域の方に持っていただけるようになりました。一人親家庭の子どもを、その残った一人の親だけで支えようとするから破綻するのです。地域が肩代わりできる部分は一緒に支えようじゃありませんか。地域を巻き込めば何でもできるのです。
 例えば、どんどこ活動での災害避難訓練も、ただ避難すれば良いという内容ではなく、地域のお年寄りや身体の不自由な方を児童館(第3次避難所)に連れて来よう、というものになりました。その前年の活動で、実際に児童館を福祉避難所として使う活動をやり、地域の中学生と共に、身体が不自由な人や赤ちゃんを抱えたおかあさんをどう支えていったら良いのか体験していました。2年連続しての活動から、支えて貰った子どもが高学年になると、支援する側に回れると感じました。
 さらに、活動協力をお願いするために地域を回ると、「子どもたちを見守るのが生きがいらて(生きがいです)」と言って貰えるようになりました。児童館活動が、地域の、関わりたい気持ちはあるけれど、実際にはどうすれば良いかわからない潜在協力者に、活動する場を与えることができたのです。今、私たちは「支え合える地域で育った子は自分に自信が持てる、何があっても強く生きていける、地域の人と一緒に生きる力を育んでいこう」という信念と共に、児童館運営を行っています。

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避難所生活を体験しよう!

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「子どもたちを見守るのが生きがいらて(生きがいです)」/地域の人を助けよう!

施設基本情報

施設名  燕市 小中川児童館
施設種別  児童館(小型)
運営形態  公設民営
運営団体名  燕市
所在地  新潟県燕市小古津新19-1
創設年  平成21年
来館児童数  1日平均 約90名(平日)
登録児童数  1年生-6年生 合計105人
スタッフ数  11名

 小中川児童館は、のどかな田園風景が広がる地域にあり、開設5年目です。職員はそれぞれダンス・折り紙・科学遊び等得意分野を持ち、子どもたちと"自分が好きなことを分かち合う時間"を楽しんでいます。地域の方を講師に招いて、リース作り、餃子の試食会等も行っています。

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