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児童館から発信!  安心して遊ぶことのできる地域環境を目指して

川崎市 枡形こども文化センター
館長 鈴木 有紀子

私が以前勤務していた高津こども文化センターで、地域の皆さんと4年間かけた取り組みを紹介します。

1.地域の問題?こ文の問題?

 川崎市高津区にある高津こども文化センター(通称:高津こ文)は、JR南武線溝の口駅と、東急田園都市線高津駅のちょうど真ん中辺りにある、利便性の良い施設です。
 午前中は、乳幼児親子の利用や、ダンスサークルなどの地域住民の団体利用、午後は小学生、夕方から夜間にかけては中高生の利用も多く、一日を通して賑やかな館です。
 隣には、高津こ文と管轄が異なる公園があります。

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 その公園はトイレもなく決して大規模な公園ではありませんが、近隣の保育園の園児さんたちの利用も多く、また自主保育サークルの活動や、社会人の憩いの場ともなり、賑やかです。 放課後の時間は、子どもたちがボール遊び、鬼ごっこなどをして元気いっぱい走り回っています。
 そんな公園を、高津こ文の一部と思っている利用者も多く、公園でのトラブルを高津こ文に相談されることがありました。
 例えば、砂場にガラスの破片を見つけた、沢山のゴミがある、朝からお酒に酔っている大人声をかけてきて怖いなどです。
 公園の問題は、対応すればするほど尽きることなく次々にやってきます。それは高津こ文の本来業務に大きく影響してしまうほどでした。
 公園管理の管轄は、高津区役所道路公園センターだったこともあり、私たちが相談を受けた内容を整理し、道路公園センターと連携し対応をしてきました。

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2.問題発生

 公園を朝から毎日利用するお酒臭い大人が、なぜかどんどん増えていきました。それは、高津こ文のすぐ横にある公園のベンチが全て埋まってしまうほどでした。その人たちが泥酔状態で館内のトイレを利用するようになり、館内の子どもたちに声をかけ、子どもたちが怖がるようになってしまったのです。
 最初は、職員が声をかけ、この施設は児童館であることを説明し、トイレがすんだらすぐに出ていただけるように説明しました。ところが、子どもたちへの干渉がどんどんエスカレートし、館内で遊ぶ子どもたちに絡むなどのトラブルが起きたのです。
 泥酔状態の相手では、職員の声かけも通じなくなってしまう時もあり、職員だけでは手に負えず、警察等に相談し対応していただいたこともありました。それでも、嫌がらせのような行為が続き、時には公園で遊んでいる子どもたちにも威嚇するようになり、「酔っている大人が怖くて館に遊びに行けない」と言う子ども達の声や、保護者からの心配の相談も高津こ文に数多く寄せられました。
 職員が、何度も何度も説明をしても、朝からしらふの時がありません。「わかった、わかった、高津こ文には入らないから、公園にいる。俺たちにだって公園にいる権利があるだろう」言われるだけで、現状はなかなか変わりませんでした。ただ、このまま放っておくわけにはいきません。

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3.地域全体で解決したい

 この問題は、高津こ文だけでは解決することができません。  そこで、高津こども文化センター運営協議会にこの状況を説明し、協力を要請しました。
 すると、早速沢山のアイディアを頂きました。
 青少年指導員さんが、会議の翌日から巡回パトロールのルートを、高津こ文と公園に立寄るように変更していただきました。

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 近隣自治会の各会長が、他の会議で公園の問題を取り上げると、近隣にある他の公園が同じような問題を抱えていたことがわかりました。その公園はベンチを撤去したことで問題は解決したとのことでした。解決した公園にいられなくなった酔った大人たちは高津こ文隣の公園に集まるようになったことがわかりました。また、公園のベンチを撤去しても、その大人の居場所はどうなるのか?という別の視点の問題も上がりました。
 小学校、中学校の各PTAでも、子どもたちの遊び場が困っていると運営委員が保護者に投げかけてくれました。
 私が区役所の主催する子育て関連の会議に出席すると、自主保育サークルの悩み事の一つが、公園の酔っ払いのおじさん達であることもわかりました。
 こうして高津こ文をとりまく様々な場所で公園の問題が話題になることで、地域の大人の目が、高津こ文とその公園に向くようになり、少しずつ、酔った大人達は静かになりました。  また、子どもたちも頑張りました。最初は、職員がゴミ拾いをしている姿をみて数人が手伝ってくれました。ゴミは、アルコール類の瓶や缶がとても目立ちます。
 子どもたちから、「なぜ大人の捨てたゴミを、僕たちが拾わなきゃいけないの?」と聞かれ、大人の私としては、複雑な気持ちになりました。
 ある日、いつものように子どもたちとゴミ拾いをしていると、前日の行事「だがしやさん」のゴミが沢山落ちていました。
 それを見た子どもたちは、「ぼくたちもゴミを捨てちゃいけないね」とつぶやきました。  そのつぶやきは、毎月開催しているこども会議で、いつも遊んでいる高津こ文と公園をきれいにしたいという意見となり、毎年恒例の大掃除には、公園のゴミ拾いもすることになりました。  問題解決は、更に進みました。
 行政と民生委員さんの働きかけで、酔った大人1人ひとりの就労支援や、生活保護等の支援が進みました。道路公園センターの巡回も増え、公園内のベンチの位置を変更するなどが検討されました。
 職員は、不審者対応研修等を実施し、知識を身につけました。
 また館内を整備し明るい雰囲気作りに努め、子どもたちには自分の身を自分で守るよう遊びを通して働きかけました。
 その結果、子どもたちが怖い思いをすることは減少し、高津こ文の利用者も大幅に増加しました。
 また、大人の捨てたごみを子どもが拾っている姿を見た公園地域の自治会長は、公園をきれいにすればトラブルも減少するのではないかと、自治会主体で定期的に公園のゴミ拾いをすることに繋がりました。
 それは地域住民主導の公園管理運営委員会が発足するまでに至りました。

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こども会議 / 外掃除

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クリーン大作戦公園清掃 / クリーン大作戦窓ふき

4.児童館から地域に発信しよう!

 このことをきっかけに、地域住民の館に対する見方も大きく変化しました。高津こ文は「公園の隣にあるよく分からない施設」から、児童館であり、健全育成のための目的施設であることも理解をしていただくことができました。
 特に嬉しかったのは、近隣小学校のPTAが取ったアンケート「放課後のみんなの遊び場ベスト5」の中に、館とその公園がランキングしたことです。
この取り組みから得たものは、「地域の中に存在感のある児童館であることの重要性」です。  高津こ文だけではとても解決できない問題を、子どもたちと一緒に地域に働きかけ、時間をかけて地域の皆さんと解決の糸口をつかんだことは、私たち職員の自信にもなりました。このように地域と一体となり、子どもたちが安心し、安全に遊ぶことのできる環境作りを、これからも児童館から発信していきたいです。

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施設基本情報

施設名  枡形こども文化センター
施設種別  児童センター
運営形態  公設民営
運営団体名  公益財団法人かわさき市民活動センター
所在地  神奈川県川崎市多摩区枡形6-3-1
創設年  昭和37年
来館児童数  1日平均 約70名(平日)
スタッフ数  通常 2名体制

 枡形こども文化センターは、生田緑地のすぐ横に位置する、「老人いこいの家」との合築施設の2階にあります。
 近年は、近隣の宅地化が進み、乳幼児親子の利用が増加しています。
 夏休み期間中かけて制作される「おばけ屋敷」は、本格的&独創的で人気のイベントです。また地域の協力のもと、様々なイベントを実施しています。

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