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地域と連携し世代を超えて楽しもう! 「中高生の体験の場」

川崎市 白山こども文化センター
館長 今村 江理子

1.きっかけ

 川崎市は「音楽のまち・かわさき」をキャッチフレーズに音楽を中心とした文化、芸術活動の創造を通じた、活力とうるおいのある地域社会を目指しています。  そして、様々な活動を通じて地域の交流の場として「音楽」が地域に根付いてきています。  市は青少年健全育成を目的とする児童館における事業のうち、中学生・高校生の居場所づくりの一環として3箇所の「音楽室」を設置しました。
 その1つが私が勤務している児童館です。
 今年度の「音楽室」登録人数は、個人登録として180名、バンド数は66組と多くの方々の利用があります。

 川崎市の児童館は目的施設として運営していますが、支障をきたさない範囲で、市民活動の場としても有効活用をしており、「音楽室」は幅広い年齢層で地域の方々も利用しています。
 中高生の利用が少ない児童館として、中高生の健全育成の環境づくりの取り組みは、職員にとっても課題の1つでもあります。
 ただし、うちの児童館には、「音楽室」があり、高校生を中心に利用者が多数います。
 「音楽室」は防音室であり、職員ですら、中高生のバンド演奏をまともに聞くことはなく、ただ、ひたすら、スタジオとしてバンド練習に励むという形が常であり、来館して、受付を済ませ、練習が終わると帰宅するというだけで、職員とはあいさつやたわいのない会話をする程度でした。

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2.中高生の現状

 ある日、バンド練習にきた高校生に「どんなところでバンド演奏を披露しているの?」と尋ねたところ、発表の場と言えば自分たちの学校の学園祭くらいだと答えてくれました。
 一生懸命練習をしている成果を発表する場を提供できたら・・・高校生たちにとって、披露する場があれば、自信にも繋がり、さらに体験を通して社会性も身に付くのではないかと考えました。  高校生に「「音楽室」以外の場所でバンド演奏ができたら、うれしい?」と聞いたところ、「うん。」と答えが帰ってきました。
 スタジオという限られたスペースで演奏するより、広い場所で演奏し、観客がいる方が楽しいはずであり、やりがいもあることは、私でもわかることでした。

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音楽室(日頃の練習風景)

3.行事への取り組みと課題

 そこで「音楽」を通じて中高生対応の企画ができないかと考えました。
 企画の内容は、児童館で「ライブ」を開催し、思いっきり音を出して、楽器の音をからだで感じ、楽しめる体験の場でした。
 ただし、この企画には、いくつかの課題がありました。
 私が勤務する児童館は、周りを数多くのマンションが立ち並ぶ中心部に立地しており、防音室以外で「音楽」を行うことで、大きな音が発生することでした。
 そのため地域住民に迷惑がかかることを想定しました。
 それを解決させるためには地域の協力も必要であると思い、地域と連携して進められる企画を考えました。
 そして児童館は、0歳から18歳の児童が利用対象であるため、異年齢交流も含めた内容で取り組むことにしました。

4.地域との連携と課題解決に向けて

 まずは、地域との交渉を進めるため、運営協議会の方に相談した結果、秋に地域の自治会のイベントがあることを教えてくれました。
 そのイベントとは、児童館に隣接した広場での「おまつり」でした。
 「おまつり」には多くの出店とステージも行うことが決まっていました。
 さらには、商店街もコラボしてそのおまつりに参加し、地域で盛り上がる計画でした。
 自治会のおまつり実行委員長に児童館でも同じ日に児童館まつりを開催し、ライブを行いたいと相談したところ、自治会の実行委員長からも、「ぜひ、児童館もコラボレーションしてください。」と快く、同時開催を承諾してもらえました。
 その結果、課題の1つでもある「音」の問題もクリアしました。
 自治会のおまつりの出店と重ならないよう配慮をしながら、「ライブ」を中心としたおまつりの企画内容を早々に詰めていき、広報も進め、立て看板も作成しました。
 もちろん、集会室は「ライブ」会場です。
 中高生に趣旨を説明し、参加者を募りました。
 その結果、4組の高校生バンドが応募してくれました。
 「ライブ」開催にあたり、もう1つ、課題がありました。
 それは、音楽室の機材のチューニングでした。
 この件は、「音楽室」を利用している方がお手伝いをしてくれることになり、当日はライブ経験者として、出演した高校生にもアドバイスをしてくれました。

5.当日を迎えて

 おまつり開催当日になりおのおのの準備を進めるなか、「ライブ」会場のセッティングは、高校生自身が行い、それと同時に児童館の広場では、おまつりの出店もスタートし、幼児親子や小学生が親や祖父母と一緒に楽しそうに遊んでいました。
 もちろん、周りでは自治会主催の出店や商店街のイベントも開催しています。
 児童館のまわりは、おまつりで一色になり、いよいよ、ライブ開催時間が近づきました。
 時間が近づくにつれ、ライブ会場である集会室には、地域の方々や小学生、中学生が来場し、席がうまりはじめました。
 ライブが始まり、集会室に普段では聞き慣れない音量の音が響き渡りました。
 小学生や地域の方もはじめは、音のボリュームにびっくりしていましたが、音が体に伝わり、リズムを刻んでいました。
 高校生がライブ演奏を楽しんでいる様子が、私たち観客にも素直に伝わってきました。
 思いっきり演奏を楽しみ、そしてお互いを応援しながらリズムを取り合う高校生の姿は、児童館ではなかなか見られない姿でした。
 そして、何よりも演奏をしている高校生ひとり一人が自信に満ちていました。
 無事にライブ演奏も終わり、会場の片付けを行う姿は一回り大きくなったように感じました。開催当日までの打ち合わせを経て、実現した中高生の発表の場での体験で子どもたちの満足度は私にも伝わってきました。
 自治会や商店街のおまつりも終わり、児童館まつりも片付けをしていたころ、高校生自らが片付けを手伝ってくれていました。
 片付けを終えても、児童館内の小学生と会話をしたり、遊んだりといつまでもおまつりの熱気の余韻を楽しんでいるようでした。
   そして、今回の「ライブ」のチューニングを手伝ってくれた20代の方は、高校生のころから、児童館の「音楽室」を利用し、今も「音楽室」利用者と言う立場から後輩である高校生のためにボランティアとして、関わってくれました。

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こ文まつりライブ(熱い応援ありがとう!)/こ文まつり(親子で模擬店!)

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こ文まつりライブ(音楽室を飛び越えて!ステージへ!)/ポプラまつり(地域のイベントとコラボ!)

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こ文まつりライブ(出演者全員でハイ!ポーズ!)/商店街我楽多市(色々な物を売っています。)

6.地域との橋渡しとなる環境づく

 その後、地域のイベントを広報したことで、音楽室を利用している中高生バンドは、地域のイベントにエントリーし、演奏を披露しました。
 さらには2月に行われるこども文化センター53館、全館合同行事で幼児から高校生まで、集客数が約600名の大舞台でのステージ出演も決まっています。
 児童館が取り組む中高生の健全育成として、このように練習の成果を発表するチャンスを提供することで、児童館との繋がりを深めることもできました。
 今回このようなイベントを開催できたのも、数多くのマンションが立ち並び、地域の年齢も様々な世代がいるところにある児童館だからこそ、地域ぐるみで交流を持つことで、実現できた企画であり、さらに、地域の方に児童館での活動を知ってもらうことができました。
 私は、中高生が体験したことがこれからの成長の糧になることだろうと思いました。
 そして、児童館は地域との橋渡しとなる環境づくりで異年齢を通して次世代へ繋ぐ役割があるところだと感じています。
 その橋渡しを地域の協力を得て、実現できたことは、地域ぐるみで健全育成に取り組む姿であり、これからも世代を超えてたのしめる児童館運営を行いたいと思います。

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施設基本情報

施設名  白山こども文化センター
施設種別  児童センター
運営形態  公設民営
運営団体名  公益財団法人 かわさき市民活動センター
所在地  神奈川県川崎市麻生区白山4-2-2
創設年  昭和 61年
来館児童数  1日平均 約45名(平日)
スタッフ数  通常 2名体制

白山こども文化センターは川崎市北部に位置し、緑豊かで自然に恵まれた環境の中にある児童館です。  子どもたちの遊び場の拠点として、様々な行事やクラブ活動、乳幼児親子の育児支援や中高生の居場所づくりを提供し、地域住民と連携・協力し子どもたちのためにニーズに合った運営を心がけています。

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