home

みんなが来られる場所であるために -障がい児の受け入れに向けて-

北海道中標津町 西児童館
大久保 さくら

 中標津町は北海道の東に位置する人口約2万4千人の小さな町です。本町に児童館は5館あり、私の勤務する西児童館は毎日70名近くの子どもたちが元気に遊んでいます。その内、何らかの障がいを抱えた児童が2割近くいます。以前は2〜3名程度であり、個別支援で対応が可能でしたが、近年児童利用数が増加した上、障がいにも様々な特性をもつ児童が増えてきたことから、受入れに対して不安を感じるようになりました。児童館が誰でも安心して遊びに来られる場所である為に、私たちに何ができるかを考えるようになりました。そこで受け入れに向けての具体的な取り組みを整理しました。

1.「受け入れたい」という思いの中で

登録申し込み時の聞き取り(面談)

 児童クラブ入会前には必ず保護者とお子さんに来館してもらい、面談を行います。保護者から児童の家庭での様子や就学前の集団生活の状況等を聞き取り、同時に児童館の必要に応じて出身園や児童デイ等からの引き継ぎ及び、その後の学校との情報交換の承諾を得ます。児童館単独では開示してもらえないことは、児童館を統括する子育て支援室から関係機関へつなげてもらうことで、統一した関わりが持てるようになりました。

nakasibetsu_01.jpg

2.ネットワークを生かして

職員間の連携(事例検討)

 児童館と保護者の連携が効果的に進められるように月に一度の職員会議で事例検討を行います。それぞれの指導員が児童や保護者との関わりや見解を共有し今後の方向性を統一した上で、各指導員の持ち味を生かした関わりをするように役割分担を明確にします。

nakasibetsu_02.jpg
 

学校との連携

 子どもを支援する上で、学校との連携はなくてはならないものです。違う関わりを持つ機関だからこそ児童の状況と家庭の状態等の情報交換は欠かせません。また、障がい児にとって、過ごし方の違う学校と児童館の中で、同じように支援を受けいれていくのは難しいところがあるようです。支援側は同じ方向性をもって伝えているつもりでも、使う言葉が違うと同じことを言われていると思えないこともありました。児童がわかり易く支援を受ける為に、支援者同志が密に連絡をとって児童が困った時の対処法等を同じ言葉で伝えられる体制を整えることが必要だと感じました。

専門職との連携

 指導員にとって、専門外分野である障がい児の受入れで難しいのが様々な障がいへの特性への理解です。研修会などで学ぶ機会もありますが、身近な事例の支援法が知りたいというのが正直なところです。児童デイとの連携体制を活用して児童の日常行動を観察してもらい、専門職の助言・指導を取り入れることは不可欠でした。障がい児に対して、児童館としてできる事を知ることは指導員にとっても支援がし易くなりました。

 

家庭との連携

 児童の8割は保護者が迎えの為、指導員と保護者の日常会話の中から保護者の困り感を聞き取るようにしています。子どもが児童館で困っている時には、学校や家庭でもSOSサインを出していることが多く、また逆もあるからです。最近、怒りっぽい・泣きやすい等落ち着かない様子がある時には小さな事でも伝えてもらうようにしています。ひとり親家庭も少なくない為、家庭に帰って子育ての相談相手がいない人も多く、親が一人で悩んでいるケースも多くあります。子どもの為に指導員が保護者に寄り添い、受けとめる大切さを感じています。

「子育て支援・虐待防止ネットワーク」の活用

 障がい児の受入れを考えるにあたり、切り離せないのが虐待家庭との関わりです。
 障がい児の子育てに難しさを感じ、虐待につながるケースも少なくないからです。又、虐待の環境の中で適切な養育を受けられず支援を必要とする子どももいるからです。  中標津町では支援が必要な家庭に対し、各関係機関がそれぞれの機能を生かした役割ができるように「子育て支援・虐待防止ネットワーク」を設置しています。
 日頃から直接的に親子と関われる児童館は、予防・発見・受入れ等の役割を担っています。児童館の位置づけが明確になることで関係機関との連携がよりスムーズになりました。又、児童館の役割を認識してもらえることで必要性を認めてもらえるようになってきたように思います。

nakasibetsu_03.jpg

3.受け入れるための工夫

環境つくり

 児童館の特性を生かしながら支援する為には、環境作りは欠かせません。児童の動きや住み分けを深く考えず配置していた時には、児童以上に私たちもすごしづらさを感じていました。児童デイの方が来た時の「先生たちもすごしづらいでしょう」との一言がきっかけで、環境作りをしなければよりよい支援は始まらないと気づきました。そこから児童館の環境整備が始まりました。
 支援側の都合で設置するのではなく児童の目線で考えました。児童が使える・使えない場所の住み分けには、床にテープを張って仕切りました。遊び場として安全を考えた上で、子どもの大好きな隠れ家的スペースを作りました。子ども自身が片付けをしやすい配置の工夫もしました。困ったのが、静かに過ごす空間の確保でした。落ち着いて話をしたい時でも静かな場所がないのです。物にあふれた台所の一角を使うぐらいでした。パニックになった時に心を鎮める場所・体調が悪い時に体を休める場所は、支援体制を整える為にはどうしても欲しい空間でした。その時"保健室のカーテン"が思いつきました。狭い事務室を必死に片づけました。廃校になった学校からカーテンレールとカーテンをもらってきて設置。中には小さめのソファを置きました。児童館の保健室が出来ました。必要に応じてカーテンで仕切り、障がい児に限らず体調を崩した時や心が疲れた時に誰でも使えることで、障がい児がより使いやすくなります。 
 言語理解が苦手な児童への対応としては、写真を用いて視覚でわかりやすく表示しました。
 雰囲気や空気を読み取るのが苦手な子には、言葉を具体的に表示することが有効的でした。言葉を活字にして分類してあげることで、抽象的なことが具体的になるからです。
 注意しなければならないのは、情報が多すぎると必要なものが生きてこないので、適度な量の表示を心がけています。
 このような工夫で、子どもたちは自由な時間に自らどこで何をするかがわかり、安心した時間を過ごせます。また、疲れた時に人ごみを離れ、落ち着く居場所を確保することで安心する事が実感できれば、児童館以外の場所でも対応できると思います。

nakasibetsu_04.jpg

4.おわりに

 子どもを取り巻くネットワークを有効活用することで、子どもたちの為に誰が何をするかの方法にとらわれず、関わる大人たちが子どもの幸せを考える、そんな地域でありたいと願っています。童館が誰でも来れる場所である為に日々進化していきたいと思っています。

nakasibetsu_05.jpg

施設基本情報

施設名 中標津西児童館
施設種別 小型児童館・放課後児童クラブ
運営形態 公設公営
運営団体名 中標津町
所在地 北海道標津郡中標津町西5条北3丁目
創設年 昭和52年
来館児童数 1日平均 約65名(平日)
登録児童数 1年生〜3年生 合計73名
スタッフ数 通常 4〜5名体制

 中標津町の児童館は、子育て支援の拠点として位置づけられ、様々な事情を抱える家庭の受入れを積極的に取り組んでいる。児童館単独ではなく、統括する行政がコーディネートすることにより、地域・学校・児童相談所・病院などの関係機関と連携の幅を広げ、より一層児童館の持つ特徴を生かした支援の実現が可能となってきた。

pagetop