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守りたい! 地域のたからもの ー『いのちのおはなし』ワークショップの実施ー

岩手県大船渡市 放課後児童クラブ にこにこ浜っ子クラブ
指導員 久保田 涼子

1.気になることが

 東日本大震災で学童施設は被災し、保育場所を転々としましたが、支援を受けて平成25年3月に仮設施設が完成し、子どもたちの生活も落ち着いたと思っていました。
 しかし、夏休み頃から子どもたちの遊びの中で、「○○君が自殺したそうです」とか「屋上から飛び降り自殺をしました」など『自殺』という言葉が出てきて気になっていました。その頃、テレビ等でいじめを苦にして自殺した少年のことが報道されたり、近くで大学生が飛び降りたことなどが原因では、と思いました。
 震災でたくさんの方が亡くなりました。自分たちも死と隣り合わせの中助かった『いのち』を大切にして欲しいと思いました。

2.ワークショップの開催

 そう思っていた時、県立児童館いわて子どもの森主催の「いのちのおはなし」のワークショップの案内をいただきました。3年前に一度このワークショップを行なったことがありましたので父母会役員会に学童での状況をお話し、すぐに父母会の了解を得て行うことを決めました。
 このワークショップは、児童館主体のワークショップと地域でつくるワークショップの2通りあります。私たちの学童では、地域の方たちとつくるワークショップを行うことにしました。

3.ワークショップの準備

 「地域でつくるいのちのおはなし」は、ワークショップ進行の台本作りやお手伝いをしてくれる地域の方々を自分たちで探します。
 まずは、地域でお手伝いをしてくれる方の人選です。地域の方で絵本の読み聞かせボランティアをされている方、人権擁護委員の方にお手伝いをお願いしたところ快く引き受けてくれました。そして、子どもたちに一番伝えたい「いのちの大切さ」をお話してくれる方はなかなか見つかりませんでした。私の友人に震災で息子さんをなくされた方がいて、ぜひ子どもたちに子を想う親の気持ちをお話して欲しい、とお願いしたところ、「自分でよければ」と引き受けてくれました。
 お手伝いしてくれる方も決まり、進行のための台本づくりをし、子どもの森のスタッフと打ち合わせをし、準備しました。

4.当日の流れ

 そして、当日。午後1時からにこにこ浜っ子クラブの施設で行いました。参加者は学童の子どもたち12人、保護者の方5人、地域の民生委員の方4人、地域の子育て支援関係者の方7人、子どもの森スタッフの方4人、学童スタッフ3人、計35人です。  はじめに、アイスブレイクで「おてぶしてぶし」の手遊びをして、場を和ませてくれました。
 その後、みんなの話の中に「自殺」という言葉が頻繁に出てきていたことが気になって「いのち」について考えてみようと思い、このワークショップをする理由を話しました。
 次に、「いのち」ってなぁに?と子どもたちに問いかけ、「いのちの音」を聴診器で聞き合いました。「ドックンドックンっていってる」「バクバクいってる」などそれぞれが感じたことを話していました。
 次に、男の人と女の人のカラダの違いを話し、みんなはお父さんとお母さんが愛し合って生まれてきことを話しました。生まれてくることの大変さ。生まれてきた時周りの人達の喜びなどを話しました。
 そして次に、震災で子どもさんを亡くした淺沼さんにお話してもらいました。
 震災の時息子さんは25歳。お互い職場から避難してきて避難場所で会い、お互いの無事を確認し安心したのですが、なかなか家に帰ってこなかったので探しに行きました。消防団員として皆を避難誘導していたところに、波が襲ってきました。遺体安置所できれいな顔で眠っていた息子さんと会いました。もう息子はいないけど、その息子から「母ちゃん、俺は幸せだったよ。心配しないで笑って!」と言われているように思う、と話してくれました。
 そして、淺沼さんは子どもたちに「お父さんお母さんは、学校でちゃんとお友達とうまくやっているか?給食を食べているか?などいつも子どものことが心配でいるんだよ。困ったことがあったらお話してみて。きっと力になってくれるよ。お父さんお母さんの大事な宝物だもの。いっぱいお話して欲しいと思います」と子どもたちに優しく語りかけてくれました。子どもたちは、淺沼さんの言葉にうなずきながら聞いていました。

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子どもたち同士でいのちの音を聞きあっています/淺沼さんがお話ししています

 その後に、人権擁護委員の方が「あなたたちは地域の宝だよ。悩んでいるときはお友達でもいい。近くにいる大人でもいいから、相談して欲しい。一人じゃないよ」と話してくれました。  それから、お産のお話の絵本「おかあさんだもの」を読み聞かせをしてくれ、参加された保護者の方も自分の時のことを思い出し、感動されていました。子どもたちも、みんな自分を待ってくれていたんだと嬉しく感じたようでした。
 最後に、大好きなお母さんのお腹の中にいた頃を思い出してみよう、と擬似子宮の体験をしました。産道を通って生まれてくる体験もしたのですが、「生まれるって大変だ!」と言った男の子もいました。

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疑似子宮体験をしています

5.感想

 この体験後、「大好きな人へ」とメッセージを書きました。大好きな友達へ、「いつも遊んでくれてありがとう」。大好きな家族へ「大好きだよ。いつもありがとう」、とみんな感謝の言葉を書いていました。参加された保護者の方も、「『いのち』の大切さを子どもたちに伝えていきます。参加してよかったです」と感想を書かれていました。学童指導員も「子どもたちは親御さんを含めた大人に頼っていいんだ、と安心したように思えました。これからも子どもたちに寄り添っていきたいです」と感想を話していました。

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子どもたちが大好きな人へ書いたメッセージです

6.おわりに

 父母会で話し合った時に、日曜日だと親子での参加がしやすいのでは、と開催を日曜日にしましたが、ほかのイベントやスポ少などの練習で参加者が少なかったのが残念でした。参加できなかった親御さんから、見せて欲しい、との要望があったのでDVDにしようと思います。
 震災からの復興はまだ時間がかかります。これからの街を作っていく子どもたちです。学校・地域の方々と連携を取りながら、子どもたちに寄り添って、いのちの大切さをこれからも伝えていきたいと思います。

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地域の方々と情報交換しました

施設基本情報

施設名  放課後児童クラブ にこにこ浜っ子クラブ
施設種別  放課後児童クラブ
運営形態  公設民営
運営団体名  父母会
所在地  岩手県大船渡市
創設年  平成18年
来館児童数  1年生-6年生 合計47名
スタッフ数  通常 3名体制

震災で施設が被災し、今は仮設施設で保育しています。目の前には広い公園があり、子どもたちは元気に遊んでいます。学校・地域・父母会との連携を取りながら子どもたちの安全・安心のための日々がんばっています。

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