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すべての放課後児童を見守るために

滋賀県野洲市 野洲第5・第6学童保育所
所長 梶谷 明美

1.施設拡充事業の推進

 滋賀県野洲市は琵琶湖の東南に位置し、住宅地や田畑が広がる人口約5万人の町です。
 学童保育所への入所希望者急増による待機児童問題を解消するために、平成18年には「野洲市放課後児童クラブ運営基準」を設け、子どもたちが安心して放課後の時間を過ごせる環境を整備しようと施設の拡充事業を進めてきました。

 野洲市では現在、6小学校区に対し20室の学童保育所を開所しています。運営基準に則して整備された建物では床の段差を少なくし、廊下には手すりや点字ブロックが備えられています。2室×3階建の野洲学童保育所の場合、エレベーターや屋外非常階段も設置されています。生活室とは別に、各階に3室の静養室があり、児童の体調がすぐれない時、気持ちの高ぶった児童が落ち着きを取り戻したい時、小グループ活動やリーダー会議をする時など、さまざまなシーンで使われます。
 クラブ運営のソフト面で最も重視したいのがマンパワー=指導員力です。各所に複数の専任指導員が配置され、配慮を要する特別支援児の入所に際しては「野洲市こどもの家特別支援児指導員配置検討委員会(以下、「検討委員会」という)」により一人ひとりの児童に必要な支援が数値化され、別途、加配指導員が配置されています。
 野洲第5・第6学童保育所では専任指導員が揃って朝の打合せを行い、その日の児童の出欠や活動予定などを確認します。情報を共有する中で、所内で独自に解決しなければならない問題もあれば、お隣同士、協力・連携が必要な共通課題もあります。その他、備品・食材(おやつ)購入や会議・研修など、運営に関する業務を午前中に進めています。非常勤職員が出勤する午後からは各所に分かれての打合せをします。前日までの子どもたちの様子について気になる点を連絡し、意見交換を行います。加配担当者が対象児童の支援で孤独に追い詰められることのないよう、皆で状況を理解し合うことも目的としています。

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2.関連機関との連携を図る

 野洲市と学童保育指導員会の共催で、市内全指導員を対象に発達障害に関する研修会を開催しています。滋賀県総合教育センターから専門講師を招き、支援上の疑問や不安を伝え、実践可能で具体的なアドバイスを受けることが出来ました。また、児童を個別に理解し、適切な助言を受けるために、野洲市発達支援センターの心理判定員による学童保育訪問も試行しています。
 しかしながら、このように専門的な知識を学ぶ機会を得たとしても、加配指導員の悩みが尽きることはありません。運営主体である野洲市社会福祉協議会事務局には学童保育係が置かれ、担当者は現場指導員のスーパーバイザーとしての支持や管理を行っています。実践現場では常に支援方法、職員体制、保護者からの要望等を点検し、問題が発生すれば事務局に相談することが出来ます。事務局は市内学童保育所に在籍するすべての特別支援児の状況をとりまとめ、検討委員会へ報告します。その他の関連機関との会議や研修に関する調整も行います。事業運営の公共性及び安定性維持のために、事務局学童保育係が果たす役割は重要です。

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3.多様に変化する特別支援

 障がいを持つ児童が野洲市学童保育所を利用し始めたのが平成14年度。当時の指導員には援助技術がまだまだ不足していて、日々、子どもたちに寄り添うことでしか支援の方法を見出せずにいました。失敗をし、幾度も壁にぶつかり、経験を積み重ねての対応を構築してきたのです。その後も施設環境や指導員体制が毎年度のように変動する中で、多様な支援を要する児童の在籍が増加しています。指導員が専門知識を身につけることは、学童保育集団で生活する児童支援に不可欠であるとの認識が高まりました。野洲市学童保育所の障がい児支援は、流動性の中で大きく発展、飛躍してきたのだと感じています。
 近年、発達障がい児等の集団参加が放課後児童クラブにおける重要課題とされていますが、「個」を重視されて育ってきた子どもたちを見ていると、障がい児とそうではない子たちとの境目が曖昧で、多くが社会性や対人コミュニケーションについて苦労を感じているようです。今後はすべての児童を対象とした、多様で細やかな個別支援の実施が求められるのではないでしょうか。

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4.これからの支援・育成とは

 施設の充実によって市内全学童保育所での待機児童はゼロになり、子どもたちは新しい設備で快適に生活出来ているかのようです。ところが、年間を通した小学校課業期間中の放課後保育時と小学校長期休業中(夏休み等)の季節保育時とで通所児童数が大きく変化し、子どもたちの不安が高くなる「アンバランス現象」が起きています。1年生から6年生までの異年齢集団において、成長段階の違い、生活時間の違いに配慮しなければならないなど、新たな課題が発生しています。そこで指導員は、低学年と高学年に分けた生活班を構成したり、曜日によっては下校してきた学年ごとにおやつを済ませたりなど、実情に応じた方法で、子どものストレス軽減のための工夫をしています。集団遊びや工作活動なども強制的ならないよう、それぞれの興味関心を探りながら、少しずつ経験を増やせないかと知恵を絞っています。
 放課後児童クラブに、特別支援に、求められる役割が今後ますます多様化、複雑化していくことが予測されます。しかし、どのような時代が訪れようと、「子どもと保護者の真のニーズの発見、子どもが主体となる放課後生活の実現」を、私たちの務めとして心に留めたいと思います。

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施設基本情報

施設名 野洲第5・第6学童保育所(野洲第5・第6こどもの家)
施設種別 放課後児童クラブ
運営形態 公設民営
運営団体名 社会福祉法人 野洲市社会福祉協議会
所在地 滋賀県野洲市小篠原2142-17 野洲こどもの家3階
創設年 平成23年
登録児童数
第5...1年生-6年生 合計:36名(定員数40名)
第6...1年生-5年生 合計:34名(定員数40名)(H25年10月現在)
スタッフ数 第5・第6合計13名(加配含む) 所長1名(2所兼任)

 登録児童数の増加で大規模化した学童保育所を、平成23年4月より第1?第6までの6室に分割しました。小学校から少し離れて建っているので、学校や地域と連携を取りながら往復路の安全管理等に努めています。また、建物が3階建てのため、災害時の対応に備えた避難訓練を定期的に行っています。  従来からの伝承遊びに加え、大規模ならではの6ヶ所の交流事業や、保護者会との共催事業を実施しています。今後は児童の自主性をいかした表現活動などにも挑戦し、仲間作り、生活作りを進めていきたいと思います。

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