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通所する外国籍の子どもに対する配慮について

滋賀県米原市 大原児童クラブ『はらっぱ』
主任指導員 三原 豊子

1.はじめに

 平成24年4月に外国籍の1年生の男児が入所してきました。保育園から入学してきたA君は、学校に慣れる間もなく、新しい環境は彼にとって不安と緊張でいっぱいだったことと思います。

 文化と言葉の違いから起きる度々のトラブルから、仲間関係がうまくつくれない彼は大声をあげ、唾を吐く、仲間を叩く、などの行動が目立ってきました。言葉で表現できない彼の行動は、仲間関係を益々希薄にしていきました。そこで、彼に密着した支援が必然的に多くなってきました。指導員は出来る限り、彼の気持ちを考え、彼が何を求めているのかを模索しながら日々根気強く彼に関わってきました。保護者とコミュニケーションをとりながら、学校や役所との連携のもと彼への日々の支援の様子と、その後の1年半の経緯をまとめ、報告します。

 

2.A君とは

 A君は外国籍の両親と3歳の時に来日しました。当クラブに入所するときに役所からの資料では、活発で日本語もうまく話せるとのことでした。また生活態度の面でも特別な配慮は必要ないと報告されていましたが、入所後A君を見ていると、日本語はまだうまく話せず、落ち着きが無く、所かまわず唾を吐き、意味不明な大声をあげ、他の児童を叩いたり物を投げたりというような行動をとり、都合が悪くなるとトイレに篭ったりと、支援の必要性を感じました。
 また、排便後の自己処理が困難な為によく下着や周辺を汚し、園庭での排泄行為も見られるようになってきました。  さらに、トイレットペーパーを便器や用具入れに投げ入れたり、危険物を口に入れたり投げつけるなどの行為がみられました。ブロック・小石・消しゴム・木の枝・プラスチック・ビーズ等手当り次第口に入れます。誤飲の危機に度々直面しました。安全を考えて注意をすると耳をふさぎ「ちがう、ちがう」と大声をあげ、指導員に暴力を振るってくるようにもなりました。
 3学期になっても、物を口に入れ、嘘を付くことはなおらず、益々増えていきました。

3.他の児童との関係

 人に唾を吐いたり、近くの児童に意味無く触れたりつついたりしました。また大声をあげて動き回る為に、全体が騒がしくなり落ち着きがなくなったりしました。しかし逆に、他の児童から、呼びつけにされ、見下した態度をとられるようにもなっていきました。
 そのような関わりから、次第にA君と他の児童との間に厚い壁ができ、「A君、汚い!やめて!」という声が度々あがるようになりました。するといつも、「僕悪くないもん」「○○ちゃんがわるいんだ!」「僕、やってないよ」と嘘やごまかしを言って通しますが、その後すぐ「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝ってみせる行動に出ます。ですが、A君は皆の仲間に入りたいので、すぐに他の児童の側によっていくのです。
 A君がこのような行動をとる原因を探しました。トラブルが起きた時にはAくんと真剣に向き合い、話を聞いてあげるようにしました。ゆっくりとした日本語で優しく話しかけ、何でも手当り次第に口に入れると危険だという事、唾を吐くと皆が嫌がるという事、友達を叩くと怪我をするかもしれないという事、園庭はおしっこをする場所ではないのでトイレを利用する事等々、ひとつひとつ、丁寧に指導してきました。友達に怪我をさせたり自分が怪我をしたら、両親が悲しむことも話しました。A 君は「わかった、わかった」と返事をしますが、なかなか理解することは難しいようでした。A君の気持ちをつかもうと、指導員はミーティングを重ねました。

4.他の児童への指導

 A君と他の児童の間でトラブルが発生した時、A君が何か口に入れていたら直ぐに知らせるように促し、A君も他の児童も同じクラブの仲間であることを繰り返し伝えました。A君がもしふざけて叩いてきた時は、言葉で解かるように注意してあげるよう話しました。A君は日本語がまだうまく話せない事を理解し、声をかけ遊びの仲間に入れてあげるようにと指導しました。

5.A君と指導員の関わり

 我々指導員は、先述したA君への対応として、1対1での関わりを余儀なくされるようになりました。また、基本的にトラブルに直面した指導員がその場で対応し、解決するよう努めました。常に、近くの児童とトラブルが発生しないか、また、ブロックやおもちゃを口に入れないかを、安全第一に見守ってきました。宿題の時間は、A君が大声をあげることが無いように側にいるようにして、時には好きな本を見せたり、自分の好きな絵を描かせたりして部屋の落ち着きを保ってきました。
 外遊びは広い園庭の為、走り回るA君から目を離さないようにし、隠れて排泄行為をしていないかにも気をつけて、指導員同士声掛け合って見守ってきました。それでもしてはいけない事をした時には、抱きしめてあげながら優しく話しました。

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6.他の機関との連携

 在籍している学校とは常に情報を交換しあい、共通理解を深めました。また、学校に迎えに行った時、担任の先生からその日のA君の様子を聞いたり、校長先生から保護者への対応の様子を聞いたりし、常に連携を図ってきました。また、行政機関にもA君の行動等を伝え理解を求めてきました。通訳の方にも度々お世話になりました。

7.両親への働きかけ

 日本語があまり話せない両親とは、身振りや写真で説明をして出きる限りコミュニケーションを図ろうと努めました。そのうちに、母親からA君の行動や学力面での相談も受けるようになり「心配ね、心配ね」と片言の日本語で胸の内を明かしてくれるようになりましたが、言葉の壁を感じる日々でした。しかし父親は指導員に対し、不信感を抱いているような態度をとることが多くみられました。その日のA君の様子を話そうとしても、「大丈夫、大丈夫」「オーケー、オーケー」とこちらの話を聞かずに帰ってしまったりする事も度々ありました。しかし、それでも根気強く話しかけ、伝達が不十分な時には、通訳を通して、電話連絡や書面でのやりとりを繰り返しました。やがて入所当初の指導員の言葉を聞き流す態度から徐々に変化が現れ、次第に打ち解けて穏やかな表情が見られるようになり、父親のほうからA君の様子を聞いてくるようになってきました。私たちの話を真剣に受け止めてくれるようになり、両親との距離が近くなってきたように感じました。

8.その後のA君

 徐々に真面目に話を聞こうとする態度が見られるようになってきましたが、まだまだ落ち着いて座っていられない日が続いています。日本語は少し話せるようになりましたが未だ聞き取りできない言葉が多く、日本語の未熟さ、幼すぎる行動等々、気になるところが多く見受けられます。学校でも彼の為にサポーターがつく時間が増えてきています。それに伴い、他の児童から意地悪をされる事も減ってきたように思われます。しかし微かな変化であり、今まで以上の支援が求められます。

9.今後の支援

 両親の考えるA君の将来像を知ることも私たちの支援と考えています。日本語に多く触れる事、人と人との繋がりや思いやりの心は学童にいるからこそ培うことができる部分があり、A君にとってとても大切な場所と時間になると確信しています。そしてA君への出来得る最大限の支援には、各関係機関や両親と、言語や行動について共通理解をもち、連携を図ることが大切だと考えています。今後は特別支援も視野に入れながら、両親や各機関との話し合いを深めていきたいと考えています。

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10.今後の課題

 外国籍を持つ子どもの入所に、即対応できる体制を築くこと、つまり通訳の必要性が第1となってきます。日本語上達の為に必要なサポートをしていくこと、児童と保護者相互の信頼関係を早く築く方法を考えなければいけません。その為には、入所前に配慮の必要な子であると把握できる情報を、できるだけ正確に得ることが必要であり、各関係機関、中でも役所との連携をより密にとる事が重要です。そして、不安要素を多く抱える外国籍児の代弁者として、行政に働きかけて、より良い支援を提供できるよう、丁寧に関わっていきたいと考えています。子どもたちの笑顔が、そして、保護者や指導員の笑顔もいっぱいの充実した児童クラブになるようになるよう努めていきたいと思っています。

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施設基本情報

施設名称 大原児童クラブ『はらっぱ』
施設種別 放課後児童クラブ
運営形態 公設民営
運営団体名 社会福祉法人 大原福祉会
所在地 滋賀県米原市野一色1184
創設年 平成15年
登録児童数 1年生-6年生 合計63名(平日)
スタッフ数 通常6名体制

 歴史の宝庫、長浜と関ヶ原に隣接した自然豊かなところで、旧幼稚園の独立した施設に恵まれたクラブです。男2人女4人の幅広い年齢層の指導員が、それぞれの持ち味をだし合い、子どもたちの笑顔を追いかけ10年。前庭には夏は虫捕り、冬にはそり遊びのできる丘もあり、のびのびと、元気いっぱい走り回っている子どもたちは、クラブの誇れる姿です。

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