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地域のスーパーに民間児童クラブを併設

NPOが取り組む、新タイプの放課後児童クラブ

放課後児童クラブ きっずぽーと(新潟県新潟市)

民間ならではの特質を活かしながら、児童クラブの運営に取り組む「ディンプルアイランド」。
保護者の要望を受けて昨年開所した新しいクラブは、企業とのコラボレーションによって実現したものです。
その開設までの経緯を追ってみました。

小学校開校に伴い、児童クラブ新設へ

 新潟市で初めてNPO 法人として放課後児童クラブを立ち上げ、その活動が注目されているのが「ディンプルアイランド」です。創設は2004(平成16)年。現在は秋葉区内の3学校区で4つの放課後児童クラブを運営しています。そのうちのひとつ、昨年できたばかりの「きっずぽーと」に、理事長の佐々木美佳子さんをお訪ねしました。じつはこの「きっずぽーと」、地元の食品スーパー「ウオエイ」に併設されているという、全国でも珍しいケースの児童クラブなのです。
 めざす「ウオエイ」荻川店は、信越本線荻川駅から徒歩5分ほど。大きな店舗なのですぐにわかり、その一角、フェンスで囲まれたところが「きっずぽーと」の入口です。出迎えてくださった佐々木さんに、さっそくお話を伺いました。この場所を選んだのは、どのような理由からだったのでしょう。
 「地元の市立結小学校は、新興住宅地にある生徒数が1000人を超えるマンモス小学校。私たちが運営を引き受けていた放課後児童クラブ『あおぞらクラブ』の児童数も、2006(平成18)年にはすでに100人を超えており、その後も増える一方でした。そして2011(平成23)年春に新しい小学校ができることが決まると、そこにも放課後児童クラブはつくってもらえるのかという、保護者からの不安の声が聞かれるようになったのです。一昨年のことでした」
 新小学校の新しいクラブも、ぜひ「ディンプルアイランド」で、という声も聞かれたそうですが、佐々木さんには即答することができなかったといいます。当時、市内に112ヵ所あったクラブのうち、96ヵ所は指定管理者運営の「ひまわりクラブ」でした。指定管理者ではない「ディンプルアイランド」が手がけるには、「場所」や「資金」など、さまざまな問題が大きく立ちはだかっていたのです。

p24_1.jpg 女の子たちは今、編み物に夢中。スタッフがやさしく教えてくれます。

p24_2.jpg 「ウオエイ」荻川店の向かって正面右側、フェンスの向こう側が「きっずぽーと」。

p25_1.jpg 外がよく見える明るく開放的な室内は、フローリングのワンフロア。

p25_2.jpg 壁の向こう側は、宿題をしたりする「静かなスペース」。落ち着いた畳のスペースも。

NPOと企業、ふたつの思いが重なって

 そんななか、保護者有志から「新小学校に放課後児童クラブを立ちあげる会」が発足。何度も話し合いを重ね、アンケートも実施していくうちに、2009( 平成21)年6月には、新しい児童クラブの運営を「ディンプルアイランド」に行ってほしいという住民側の意思決定がなされました。保育料も安く、学校内に施設を構えられる「ひまわりクラブ」を選択する保護者もいましたが、それ以上に「ディンプルアイランド」ならではの自由であたたかい保育を望む声が多かったのです。
 「大きく背中を押されたような気がしました。学校内施設でなくても、私たちができることをしていけばいい。現場で見ている子どもたちを手放すことなく、クラブ卒業まで保育しようと覚悟を決めました」と佐々木さん。そして、いよいよ「場所探し」が始まりました。
 約100 人の児童が常時利用でき、学校から近く安全なところ。保護者の送迎に適した駐車スペースがあり、子どもの声、音楽等の近隣への配慮もできるところ――数々の条件を満たす場所として、佐々木さんが見つけたのが「ウオエイ」荻川店だったのです。じつは地元の食品スーパー「ウオエイ」は、児童クラブで用意する「おやつ」を通して、かねてよりお付き合いのあった企業でした。その荻川店に一部空きスペースがあることを知り、佐々木さんはさっそく相談に出かけたのです。
 スーパーに児童クラブを併設したいという前例のない申し出に、「ウオエイ」の社長は最初とまどいを見せたものの、佐々木さんの熱心なアプローチの甲斐あって、やがて快く応じてくれたといいます。児童クラブができることによる商業的効果はもちろん、地域密着型地場食品スーパーとして、地元の子どもたちの健全育成に力を貸すことが企業としても大きな意義を持つと、社長は判断。つまり、少しでも未来を担う子どもたちの役に立てたら、という「ディンプルアイランド」の思いを共有してもらえたのです。こうして、スーパーに併設された児童クラブが、県内で初めて誕生することになりました。

p25_3.jpg 右奥のトイレと手前のキッチン。どちらも専有スペースにあるので、安心して使えます。

p25_4.jpg 子どもたちはスタッフが大好き。大切な遊び友達でもあります。

p26_1.jpg 「ディンプルアイランド」理事長の佐々木さんと「きっずぽーと」の子どもたち。

フットワークの軽さは民間ならでは

 「設計、工事費用、内装については、家主のウオエイさんとの二人三脚でした」と語る佐々木さん。初めての試みであっただけに試行錯誤もありましたが、「でも、こんなに早く実現できたのは、ウオエイさんをはじめ、本当にみなさんのお力添えのおかげだと思っています。民間同士のコラボレーションだったということも、フットワークの軽さにつながったのかもしれませんね」とおっしゃいます。  そして2010(平成22)年2月に工事着工、3月下旬にはついに開所の日を迎えます。新小学校の開校1年前でしたが、今までの児童クラブがすでにパンク状態にあることを考慮し、先行して開所できることになったのです。  「ゆきてかえりし港」の意味を込めて、クラブ名は「きっずぽーと」(子どもの港)に。大規模クラブを分割することで、子どもたちが戸惑うのではないかという大人の心配をふきとばすように、子どもたちは元気にやってきました。木の香りのする新しいスペースで、新しい友達ができることを楽しみにしてくれていたのです。
 ふりかえれば、佐々木さんの児童クラブへの取り組みは、ご自身がその必要に迫られたからでした。お子さんが小学校に入学する際、働くお母さんだった佐々木さんは、近くに児童クラブを探したものの見つからず、ならば自分で始めようと思ったのがきっかけだったとか。自宅を改造して開設したのが「バンブーキッズ」でした。その後、より活動しやすい方向を求めてNPO 法人を立ち上げ、地元の保護者会から「あおぞらクラブ」を、地域運営委員から「キッズクラブ」の運営をそれぞれ引き継ぎ、このたびの「きっずぽーと」開設に至っています。
 「公設と民設、児童クラブにはそれぞれの特徴があると思います。ただ、私たち民間のよいところは、先にも申し上げたようにフットワークが軽いところ。何をするにしても面倒な手続きがいらないし、ネットワークが横に広がりやすいんです。そういう長所を活かしながら、子どもたちのためのよりよい環境をつくっていきたいですね。小学校の期間って、人間形成にとってとても重要な時期だと思いますから」
 午後3時を過ぎ、次々とやってくる子どもたち。宿題をしたり、おもちゃで遊んだり、なかには老人ホーム慰問のためのダンスの練習をする子もいます。未来に向かって船出する子どもたちの、元気な笑顔であふれている「きっずぽーと」でした。

p26_2.jpg 「きっずぽーと」には、子どもたちの「えくぼ」がいっぱい。

p27_1.jpg カラフルな魚が泳ぐ壁のこちら側は、楽しく遊ぶ「おやつスペース」。

p27_2.jpg 100人分が収納できるランドセル棚。その上は、楽しいスケジュールでいっぱいです。

p27_3.jpg 老人ホーム慰問のための、ダンスの練習中。アップテンポの元気な曲です。

「きっずぽーと」の間取り図
 ポイントは、間仕切りの仕方。ワンフロアの一部を壁で仕切ることによって、「おやつスペース」と「静かなスペース」に分離しています。天井まではない低い壁ですが、この壁があるだけで、元気に遊ぶ子どもと、落ち着いて宿題に取り組む子どもが、それぞれの時間を楽しめるようになっています。また、子どもたちの飛び出しなどを考慮して、玄関前には大きなフェンスを。子どもが雨に濡れずに靴を脱げるように、風除室も設置。トイレやキッチンは専有スペースになっているほか、スーパーの音が洩れないように、壁際のスピーカーはオフになっています。
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きっずぽーと運営団体の概要

 「ディンプルアイランド」は、放課後児童クラブを運営するNPO法人です。クラブの運営を通し、子どもたちの豊かな育ちの場の提供と、子育て家庭の支援を行い、児童の心身とも健やかな発達を援助すると共に、健全で豊かな地域社会の確立をはかることを目的としています。
 ちなみに「ディンプル」とは「えくぼ」の意味。いつも子どもたちの笑顔であふれるクラブであるように、との思いから命名されました。
  • 運営主体:特定非営利活動法人ディンプルアイランド
  • 所在地:新潟県新潟市
  • 創設年:平成16年
  • 運営する放課後児童クラブ(いずれも新潟市秋葉区)
    バンブーキッズ/2002(平成14)年創設
               児童数65名、スタッフ数5名
    あおぞらクラブ /2006(平成18)年創設
               児童数140名、スタッフ数7名
    キッズクラブ  /2007(平成19)年創設
               児童数35名、スタッフ数3名
    きっずぽーと  /2010(平成22)年創設
               児童数92名、スタッフ数6名

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