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子どもたちに「絵本」との出会いを

本の楽しさや喜びを伝え、活字離れを防ぐ

大阪府 枚方市立船橋留守家庭児童会室 指導員 時恭子
子どもたちが、自分自身を支える「1冊の本」に出会えるように たくさんの本と親しむ環境をつくりたい。
そんな取り組みを続ける中で、ますます「本の力」を実感しています。

あるとき、自分の役割にめざめて

 私は、2010年が国民読書年だということを最近知ったのですが、皆さんご存知でしたか? 10年前の2000年は子ども読書年で、翌2001年に「子どもの読書活動の推進に関する法律」ができました。その中の「子どもの本の書き手、出版社、書店、そして、子どもの身近にいるすべての大人が子どもたちに本を読んでいこう」という趣旨が印象的で、それまで絵本が好きで子どもたちとただ楽しんでいたのですが、自分の役割の重要性にめざめ、意識的に絵本を選び、読むようになりました。

子どもたちに絵本を届ける取り組み

■ 市立図書館の団体貸し出し登録を利用し、毎月40?50冊借りてきて、子どもたちがいつでも手に取れるようにしています。私が心がけていることが2つあります。本を読むことを無理強いしないこと。でも、ひとりでもリクエストがあったら読むことです。また、『ぼくがラーメンたべてるとき』のように私が薦めたいと思った本は、子どもたちに「読ませて」と頼んでOKをもらってから読んでいます。

■ 誕生会には指導員が交代で大型絵本や手作り紙芝居をしたり、ボランティアによるおはなし会も年数回行っています。

■ 毎年4月には、1年生にたくさん絵本を読みます。1冊の絵本を楽しめるというのは、子どもにとってとても大事だと考えています。読書経験の少ない子どもや落ちつかない子どもには、ストーリー性のあるものより、『こんにちワニ』のようにみんなで声に出して読める絵本が好まれるようです。

p16_1.jpg 図書館から毎月40 - 50冊借りてきます。

■夏休みのお昼寝のとき、本を読んだり、ストーリーテリングをしています。子どもたちはこわい話が大好きで、『はらぺこピエトリン』や『馬方やまんば』をリクエストしてくれます。子どもたちは、こわい話を聞くことで、いつかこわいことに出会ったときの心構えのリハーサルをしているのだそうです。

絵本に出会った子どもたち

■ 取り組みを進めるうちに、1年生にせがまれて4年生が絵本を読んであげたり、3年生や自閉傾向のH君が誕生会で紙芝居をしたり、保護者参加行事で子どもたちがストーリーテリングで語ってくれたりするようになりました。

p17_1.jpg 2年生から読み聞かせしてもらっている1年生。

■ 絵本に出会っていろいろな体験をした子どもたちもいます。自閉症のI君は『これは のみの ぴこ』が気に入って、部屋をぐるぐる回りながらつぶやいているうちに、とうとう1冊を覚えてしまいました。絵本に出てくる「お団子」を家でもくりかえし言ったので、お母さんがあわててお団子を買ってきたこともありました。また、『ゆうたくんちのいばりいぬ』シリーズが好きで、I君の中で犬=じんぺいとなってしまい、I君の家の犬はじんぺいに改名されてしまいました。

■ お父さんもお母さんも弟も耳が聞こえないというM君は、1年生で入室してきたとき、ことばに飢えているという感じを受けました。『そうだ村の村長さん』や『これは のみの ぴこ』などのことばあそびの本を読んだり、しりとり、回文、早口ことば、なぞなぞをたくさんして、ことばのもつ不思議さや言い回しのおもしろさを一緒に楽しみました。

■ ロシアから来た2年生のサーシャには、市内の図書館に1冊だけあったロシア語で書かれた『つぼのおうち』をロシア語で読んでもらい、日本語訳を指導員が読みました。また、ロシアの多くの子どもたちが自分のお気に入りの詩をもっているそうで、その詩を読んでもらい、ロシア語のことばの響きを聞きました。

■ 4年生のR君は、6月の1カ月間毎日『鳥の島』をリクエストしてくれました。月末が近づくと、R君が休んでも他の子どもがリクエストするようになっていました。夏休みには、『鳥の島』の読書感想文や読書感想画もかいて、R君にとっての「1冊の本」を見つけたようだと、お母さんと話しました。

■ 児童会室の子どもではありませんが、同僚のお孫さんの3歳のTちゃんは、保育所でお尻を洗ってもらったとき、水が冷たかったことから何週間も自宅以外でお風呂に入れなくなっていました。その話を聞いて、『そら はだかんぼ!』をすすめたところ、その日からおばあちゃんの家でお風呂に入れるようになったそうです。絵本の力を改めて知り、対象が幼ければ幼いほど絵本選びが重要だと教えられました。

6冊目になった「おりがみの本」

 「おりがみの本」は、子どもたちが名付けた本です。もともとは折り紙名人のおばあちゃんや子どもたちに折り紙を教わっても、すぐに折り方を忘れてしまうので、自分が忘れないようスクラップブックに折る順番に貼っていったものです。本を見ながら折り紙を折るというのは、平面を見ながら立体を折ることなので、子どもたちにとってはとても難しいのです。「教えて」とくるのですが、手が離せないときもあって、そんなとき「これ見て折ってくれる?」と渡したのが、いつのまにか子どもたちの中で折り紙の本になってしまい、今では6冊目となっています。この「おりがみの本」だと、折図をさわったり、ときにはひっぱってみたりしながら折れるので、子どもたちにはわかりやすいようです。

p18_1.jpg 「おりがみの本」はクラブの宝物。

p18_2.jpg 折ったりひっぱったり。難しい折り方もよくわかります。

子どもたちを支える本との出会いを

 本の楽しさ、知ることの喜びを子どもたちが感じて、やがてはその子を支える「1冊の本」に出会うきっかけとなるよう、これからも読み聞かせを続けていきたいと思っています。

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紹介した絵本・本の出典

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船橋留守家庭児童会室の概要

 枚方市は大阪と京都のほぼ中間に位置した人口41万人の市です。船橋児童会では、リサイクル工作などのもの作りにも積極的に取り組んでいます。また、折り紙名人やおもちゃ名人やおはなしのおばさん、おはなしのおじさんなどボランティアの方の協力もいただきながら、子どもたちが楽しく豊かに過ごせるよう、日々運営しています。
  • 施設名称:枚方市立船橋留守家庭児童会室
  • 施設種別:放課後児童クラブ
  • 所在地:大阪府枚方市
  • 創設年:昭和58年4月
  • 登録児童数:1年生 - 4年生 合計91名   (2班体制)
  • スタッフ数:指導員1名、児童育成員3名、加配(臨時職員)4名 通常8名体制

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