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みんなで作ろう「ひまわりハウス」

大規模クラブの分割を子どもたちと一緒に

滋賀県野洲市 中主第一・第二学童保育所(ひまわりハウス) 梶谷明美

なんで「ひまわりハウス」が分裂しないといけないの?
子どもたちの引き裂かれるような思いを解消し、理解してもらうためにできることから少しずつ取り組みを開始しました。

平成22年、みんなの要望をとり入れて、「ひまわりハウス」の改修工事が完成しました。

ひまわりハウスが分裂!?

 平成21年4月のことです。滋賀県野洲市にある児童数90名の放課後児童クラブ「中主学童保育所ひまわりハウス」は大規模学童保育所から適正規模への転換を目指し、翌22年度4月から2カ所の学童保育所に分割され、それぞれ独立した形で運営されることが決まっていました。この決定を子どもと指導員に伝えたのですが、「今まで大勢で楽しく生活してきたひまわりハウスなのに、どうしてわざわざ2つに分けないといけないの?」といった反応で、すぐには皆から理解が得られませんでした。
 施設分割方法の具体案についても野洲市から提示されていない時期でしたから、クラブが分かれる姿を実感できずに不安ばかりが先行し、子どもたちの口からは「ひまわりハウスが分裂するんやって!」と、悲しい言葉が発せられ、一緒に生活してきた仲間たちが引き裂かれるような辛さがあることが伝わってきました。
 けれど現状の90人での生活をこのまま継続し、翌年の4月を迎えるとなると、返って子どもや指導員に大きな混乱を生じさせるのではないだろうか......。そう憂慮した筆者は、できることから少しずつ分割型の保育に移行し、実践の中から適正規模の価値を感じ取ってもらえるよう務めることにしました。

できるところから、一歩ずつ

 子どもたちがやって来る放課後、学年ごとに下校時刻が違うので、4年生が帰ってくるまでおやつを食べるのを待っていては、早くから手持ち無沙汰で退屈する子たちが部屋の中で走り出します。暴れます。イライラして、些細なことでけんかになります。90人の子どもを一堂に集めて着席させるとなるととても窮屈で、行き交う子ども同士の衝突も発生しやすい状況が生まれます。
 空間の使い方は1・2年生と3・4年生のエリアに分け、各学年の放課後時間に合わせた生活作りを進めました。指導員は各学年の担当者が10数人の子どもたちを見守ることにし、児童一人ひとりの様子を把握し易くしました。宿題、おやつは学年ごとの活動とし、「全員揃うまでの待ち時間」を削減したのです。さらに3・4年生となると宿題が完了する時間の個人差が大きいため、宿題を済ませた児童から自主的におやつの準備をして食べる日も設けました。
 分割に向けた建物の改修計画については、保育現場の実情と要望を伝えるために、設計の段階から指導員案のインテリア図面を提示して工事内容に反映してもらいました。例えば「キッチンは小さくとも各所に必ず備えて欲しい」ことや、「子どもたちの体調が悪いときやパニック時に対応する静養室は生活室と別に確保する」などは現場の意見として外せませんでした。
 実際の改修工事では、最初に施設中心部に収納棚付きの壁を設置し、「第1学童保育所」と「第2学童保育所」に分けました。次に第2の生活室内にはセミオープンキッチンを設置し、かつての指導員更衣室にベッドとエアコンを整備し児童静養室を兼ねることになりました。加えて生活室内には職員用の机や印刷機などの事務的機能が入り、床面積が第1学童保育所に比べて狭くなったため、分割後の児童定員も2カ所同数にするのではなく、第1を50人、第2を40人と定めるよう野洲市に要望しました。

みんなで作る、みんなのための「ひまわりハウス」

 分割事業を円滑に進めるために保育方法の見直しや施設改修工事などさまざまな変革を必要としましたが、最も大切だと感じたのは児童のクラブに対する意識そのものでした。
 大集団が指導員の指示を待って動く生活ではなく、自分たちで今何をするべきかを考えて行動する。子どもの意見がクラブ運営に生かされる。そのような機会を得てこそ、子どもの自主性が向上し、クラブでの生活を大切に考えるのではないでしょうか。
 そこで、自分たちのクラブなんだから自分たちで作っちゃおう!の精神のもと、「カーペット・デザインコンテスト」を実施しました。第1学童保育所の床材が老朽化していたので、カーペットの貼り換え工事を行う際、タイルカーペットのレイアウトデザインを子どもたちから募集したのです。床材のサンプルを見ながら方眼シートに色鉛筆で自由に着色をしてもらいました。大人ではなかなか思いつかない豊かな発想で明るく楽しい作品が集まり、それらを組み合わせて最終デザインを決めました。みんなで考えたデザインでインテリアが作られるなんて不思議! でも、嬉しいといった様子の子どもたちでした。
 ひまわりハウスが2つに分裂...... いや! 分割される前に、一緒に生活してきた仲間での思い出作りをしようと、シナ合板を使った壁画制作にも挑戦しました。2年生以上の子どもたちが学年の枠を超えて5-10数人でグループ編成をし、各グループに配られた80センチ角の合板に、それぞれが自由なテーマで下絵から着色、仕上げのクリアラッカー塗装までこつこつと進めるという活動です。途中、仲間同士のけんかが原因で思った通りの絵にならず、ぐちゃぐちゃに塗りつぶし全面深緑色にしてしまったグループもあったけれど、それはそれで良い思い出です。その板も作品として残しました。普段はバラバラに自分の好きなことだけしたいと文句の多い子どもたちも、壁画制作では協力し合い、真剣な表情で取り組みました。その後の壁画は児童用の荷物ロッカーの背板に取り付け、生活室と図書室の間仕切りとして活用しています。眺める度に指導員も、奮闘していた子どもたちの姿を懐かしく思い浮かべることができます。

ときには一緒に活動しようね

 新しい年度を迎え、これまでのように自由な行き来はできなくなった2つのクラブですが、指導員が感じているのは「新1年生が落ち着いて生活できている」ことです。放課後児童クラブにとって1年生の生活作りは新年度の重要課題ですが、30人単位と15人単位ではやはり、支援の内容に差が生まれます。
 一方、昨年度より継続で在籍している2年生以上の子どもの中には、仲良しの友だちと離れて不安定な子もいます。そんな子たちが共に過ごせる機会として、第1・第2合同の保育メニューを設定しました。
  • 「第1・第2対抗のドッヂボール戦」。月に1回試合をして年間成績を競います。各クラブのチームワーク作りや互いの交流を目的にしています。
  • 「ハンドベル活動」。第1・第2合同でハンドベル演奏の練習を行います。年度後半には発表の機会を作って、活動の目標にしたいと思っています。
 決して引き裂かれたのではなく、新しいクラブが2つ生まれたのだと考え、各所で安心・安全な生活が保障されながらも時には楽しみを共有し、協力できる関係になれれば素敵ですよね。
 そして私たち指導員も、不安や悩みを交換し支えあえる「お隣さん」同士でありたいと思います。

ひまわりハウスの概要

 中主学童保育所・ひまわりハウスのある野洲市は、宅地開発されつつもまだまだ田園が広がり、琵琶湖にも近い自然が豊かな土地です。その環境を生かし、子どもたちがゆったりと暮らせるよう、屋外での遊びや物作りに取り組んでいます。
 昨年は地域のボランティアさんに、滋賀の伝統芸術「大津絵」をご指導いただく機会も得て、新年の干支「寅」を描きました。
  • 施設名称:社会福祉法人 野洲市社会福祉協議会
    中主第一・第二学童保育所 (ひまわりハウス)
  • 施設種別:放課後児童クラブ
  • 所在地:滋賀県野洲市
  • 創設年:平成11年
  • 登録児童数:
    第一/1年生-4年生 合計49名
    第二/1年生-5年生 合計39名
  • スタッフ数:
    第一/通常6名(うち特別支援児加配2名)
    第二/通常6名(うち特別支援児加配2名)

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